【管理人の一言】

再び、米国の最高裁の反動判決です。

◆今回は、大学による人種を考慮した入学選考について、合衆国憲法が定める「法の下の平等な保護に反している」という判断です。この判決の反動的意図は「法の下の平等」と言う空虚な屁理屈のもとで、現実社会の不平等が隠されています。現実には、高所得の白人層が人口比以上に入学することになるのです。それは、教育の機会が所得により均等ではない現実を反映したものです。

 

アファーマティブアクション(積極的差別是正措置)とは、社会的弱者に対する差別を是正するための積極的な措置です。主に、女性、マイノリティ、障害者などの社会的弱者が、教育、雇用、政治などにおいて、これまでの差別によって不利な立場となっていることを是正するために行われます。

アファーマティブアクションの歴史は、1960年代のアメリカに始まります。当時、アメリカでは、黒人に対する差別が深刻な問題となっていました。1964年にアメリカ合衆国議会は、公民権法と公民権運動を支援する法律を成立させました。これらの法律は、人種、肌の色、宗教、性別、出身国などによる差別を禁止しました。また、公的機関や企業に対して、社会的弱者の雇用や教育の機会を拡大するよう求めました。

アファーマティブアクションは、アメリカで始まりましたが、その後、ヨーロッパやアジアなどの他の国々にも広がりました。日本では、1986年に男女雇用機会均等法が成立しました。この法律は、男女差別を禁止し、女性の雇用機会の拡大を図ることを目的としています。また、2003年には障害者差別解消法が成立しました。この法律は、障害者に対する差別を禁止し、障害者の社会参加を促進することを目的としています。

 

要するに今回の最高裁判決は、現実問題として大学から黒人やヒスパニック系を減らし、主に白人に高等教育を受けさせようとするものなのです。「法の下の平等」が聞いてあきれます。今後雇用などあらゆる場面で、「逆差別」といった歴史過程を顧みない反撃が強まるでしょう。アファーマティブアクションが攻撃され排除される恐れがあります。

 

◆この問題と同じように、去年も驚くべき判決が最高裁より出されています。

米国の最高裁判所は、2022年6月24日、人工妊娠中絶を合法化した1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆しました。この判決により、人工妊娠中絶は各州の裁量に委ねられることになりました。人工妊娠中絶が違法になる州が出てくる可能性があり、現実化しています。

この判決は、米国の女性の権利にとって大きな後退です。人工妊娠中絶は、女性が自分の体について自分で選択する権利です。この権利が奪われることで、女性は自分の体についてコントロールできなくなります。

この裁判を提起し支援したのが共和党でした。彼らの主張はとてももっともらしいものです。

中絶は生命の尊厳を侵害する。

中絶は女性の健康に危険を及ぼす。

中絶は女性の権利を侵害する。

 

「女性のため」「母体のため」という美名が多くの女性の選択を否定し、望まない出産を強いることになります。米国内の反動派と少しでも権利の養護を目指す勢力との軋轢が高まっています。(E)

 

29日、ワシントンの連邦最高裁前で抗議する人たち=AP

 

人種考慮は違憲、米大学の入学選考 最高裁が判断

 多様性確保に影響も

| ロイター (reuters.com)

[29日 ロイター] - 米最高裁は29日、ハーバード大学とノースカロライナ大学による人種を考慮した入学選考について、合衆国憲法が定める「法の下の平等な保護に反している」という判断を下した。

 

 

ハーバード大選考方法改革へ 米最高裁判決、バイデン氏「強い異議」

 (msn.com)

米連邦最高裁が29日、大学の入学選考について人種そのものを理由にした優遇措置を禁じる判決を下したことは、今後も大きな波紋を広げそうだ。バイデン米大統領は演説で「この判決に強い、強い異議を唱えたい」と強調。黒人やヒスパニックなどを優遇してきた米国の多くの難関大学も、志願者の選考方法の見直しを迫られることになる。

【写真】米企業も軍も求める多様性 人種考慮「違憲」の最高裁判決が呼ぶ波紋