IAEA中間報告書を分析すると…

日本の汚染水放出への「丁寧なコンサルティング」 

: 政治•社会 : hankyoreh japan (hani.co.kr)

 

 

日本が同意した範囲内で検討…放射性核種をろ過する「ALPS」の性能は検討対象外

 

国際原子力機関(IAEA)は、日本の福島原発汚染水の海洋放出計画の安全性を検討した最終報告をまもなく発表する。汚染水の海洋放出を推進する日本はもちろん、圧倒的な放出反対の世論に包囲されている韓国政府も、この報告書は客観的かつ科学的な検証の結果だとし、大きく意味付けている。

 だが、IAEAが6回にわたって発表した中間報告書の内容を詳しくみると、汚染水の海洋放出を難しくする方向に結論が出る可能性がほとんどないというのが、大方の評価だ。なぜそのような評価が出てくるのかを調べてみた。

 

■「海洋放出支援プロジェクト」として始まったIAEAの安全性検討

 IAEAは2021年9月、所属職員および韓国、米国、中国、英国、フランス、ロシア、アルゼンチン、ベトナムを含む11カ国の原子力専門家で特別チームを構成し、日本の福島原発汚染水の放出の安全性に対する検討を進めた。韓国からも、原子力安全技術院(KINS)のキム・ホンソク博士が参加している。

 国際的に発言力を認められている機関を通じて、韓国を含め利害関係が絡む11カ国の専門家が参加する検証であるだけに、結果が客観的かつ科学的である点は否定できないだろう。問題は、今回の安全性の検討の究極の目的が、「福島原発汚染水を海洋放出しても問題ないかどうか」を判断することではないという点だ。

 IAEAは、安全性の検討を始めた背景について「(2021年4月に海洋放出の計画を発表した直後に)日本が放出を安全に履行できるよう放出計画と関連活動のモニタリングと検討を支援するよう要請し、それを受け入れた」と明らかにしている。

 つまり、福島原発汚染水を海洋放出しても問題ないかどうかを判断するのではなく、日本が計画した汚染水放出を支援することが、安全性検討の目的だという話だ。「日本の要請」によって「汚染水の海洋放出を前提」になされる検討であるだけに、中立性の側面で根本的な弱点を持たざるをえない。可能性はまずないがIAEAの最終報告書の結論が放出に否定的であったとしても、日本には従う義務もない。

 

■日本が同意した範囲内で検討…放射性核種をろ過する「ALPS」の性能は検討対象外

 日本の支援要請で始まったIAEAによる安全性検討は、徹底的に「日本が同意した範囲内で」で進められている。

 日本が要請したのは、「汚染水の海洋放出計画と、それに沿って進められる放出が、IAEAの安全基準を満たしているかどうか」を技術的に検討してほしいということだった。日本とIAEAは2021年7月、IAEAの支援方法などを定義した「付託事項」(ToR:Terms of Reference)に署名し、これに基づき検討の範囲やスケジュールなどを協議して決めた。

 具体的には、放出される処理水(汚染水)の放射能の特性▽放出管理のためのシステムとプロセスの安全性▽放射線環境影響評価(REIA)▽放出のための規制と認可▽処理水(汚染水)と環境のモニタリング・プログラム▽利害関係者の関与▽職業的放射線防護などを含む8点が検討対象だ。

 これによると、福島原発汚染水に含まれる放射性核種を取り除く「多核種除去設備」(ALPS)は検討対象ではないことがわかる。実際、最近までの6回にわたる中間報告書には、ALPSの性能と運営についての内容は含まれていない。ALPSは過去10年の間に8回も故障を起こし、汚染水の海洋放出の安全性を懸念する側が特に信頼性に疑問を呈している設備だ。

 

■問題となる点を補う「オーダーメード型コンサルティング」形式で進行

 IAEAがこれまでに発表した6回の中間報告書を読むと、「提案した」「助言した」「認めた」「同意した」などの表現が多く登場することが目につく。言い換えると、IAEAの安全性検討は、「汚染水を海洋放出しても問題ないかどうか」を判断することを重視したものではなく、放出の履行を支援することが目的なのだ。

 そうした目的のもと、IAEAの安全性検討の多くは、特別チームが東京電力と関連の政府省庁である経済産業省、規制機関である原子力規制委員会(NRA)を訪問し、検討テーマに関する説明を聞き、質疑応答と討論を行う形式で進められた。

 質疑応答と討論は、日本の放出計画から安全基準を満たさない部分を発見することにとどまらず、利害当事者を説得するために足りない点を探して補完していく過程として進められた。一言でいうと、汚染水の海洋放出が滞りなく進められるよう、IAEAが日本に「きめ細かいオーダーメード型コンサルティング」を行い、共同して放出計画の完成度を高めていったわけだ。

 一例として、IAEAの特別チームが昨年11月に日本で検討任務を遂行した結果を盛り込んだ第4回中間報告書には、「(放射性物質の海洋拡散)シミュレーションの境界領域の海水中に存在する(低濃度の)炭素-14とヨウ素-129の推定値を(シミュレーションした結果に)加えれば、このような放射性核種の濃度は無視できる程度だということを示すことができる」という提言が含まれている。低濃度で生じる炭素-14などの数値を提示すれば、人々に特に影響がないという印象を与えやすいということを、東京電力側に「親切にコーチング」したわけだ。

 

 しかも、中間報告書を読むと、IAEAは日本が提出した資料と説明に全面的に依存しながらも、資料と説明の信頼性を確認する「交差検証」を疎かにしていることを示す記述も発見される。

 IAEAの特別チームが昨年2月に出した初の中間報告書で、日本の経済産業省と東京電力が周辺国を含む利害当事者に多くの情報を提供し、透明なコミュニケーションを行ったことを認め、東京電力に対しては「称賛した」とまで表現した内容がその一例だ。昨年6月に公開された第2回中間報告書には、日本の原子力規制委員会が隣国に情報を提供した努力を肯定的に評価した記述もある。

 

 こうした内容は、日本政府が「放射性物質の放出許可の過程で、情報交換が必要な利害当事者に隣国も含まれる場合がある」と規定した安全基準(GSG-9、「環境に対する放射能放出規制」)をきちんと守っていると評価したものだ。日本側から関連情報をろくに与えられず現状把握に困っている周辺国の立場としては、容易には納得しがたい評価だ。