原発事故で降り注いだセシウム、落ち葉の下で「残り続けている」

…少しずつ鉱質土層に移動 

(msn.com)森林総合研究所(茨城県つくば市)は、福島第一原発事故で森林へ降り注いだ放射性セシウムの多くが、落ち葉の下の土壌(鉱質土層)の表層に残り続けているとの分析結果をまとめた。樹木の根から吸収されて葉や枝に移動するセシウムと、表土の落葉層のセシウム量はともに減少が続く一方で、厚さ5センチ以内の鉱質土層のセシウム量はほぼ変化がないという。

 

セシウム濃度の測定のため、木材から樹皮を剥ぐ作業(森林総研提供)

 

論文は環境放射線の専門誌に掲載された。放射性物質は自然に減少する性質がある。分析は、放射線を出す能力(放射能)が半分に減る「半減期」が約30年の「セシウム137」を対象に行った。

 森林総研は、東日本大震災の5か月後の2011年8月から10年間、川内村、大玉村、只見町、茨城県の筑波山のスギ林やコナラ林など10か所で調査を実施した。

 震災5年目の時点では、落葉層のセシウムは減少していたものの、鉱質土層のセシウム量は増加していた。樹木の枝葉や落ち葉に付着したセシウムが少しずつ鉱質土層に移動し、土中の粘土鉱物と結合したためという。一方で、10年目では、鉱質土層での増加が多くの調査地点で止まり、ほぼ一定値となった。5センチより深い層にセシウムはほとんど移動していなかった。

 科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された森林総研の別の論文では、木材と樹皮に含まれるセシウムの濃度についても、増加が頭打ちになったり、減少に転じたりしていることが報告された。これらの結果から、森林総研は、セシウムが今後も長期にわたり、厚さ5センチ以内の鉱質土層の表層に残留し続けると推定している。

 地点によって調査結果にばらつきがあるのが課題で、真中卓也・主任研究員は「シイタケ原木林などの再生に向け、精度の高い将来予測を構築していきたい」と話している。