「沖縄通信」・・・沖縄戦の「裏の戦争」とは?

 

 今話題の映画「沖縄スパイ戦史」を紹介したい。

 

 

 本土決戦を迎える前の「時間稼ぎ」「捨て石」として闘われた沖縄戦。

 その沖縄戦の実相や悲劇は多くの証言や著作・映画で語られてきたが、この映画は戦後70年以上語られなかった陸軍中野学校の「秘密戦」に焦点を当てた作品である。

 

 長期かつ緻密な取材で本作を作り上げたのは2人の女性監督。映画「標的の村」「戦場ぬ止み」「標的の島 風かたか」で沖縄の米軍基地の闘いを描いた三上智恵さんと、学生時代から八重山諸島の戦争被害の取材を続けてきた大矢英代さん。

 

 「京都新聞」のコラムは、この映画を次のように伝えている。

 

 『この夏、話題を集める一本の記録映画を見た。太平洋戦争末期、日本で最大規模の地上戦が行われた沖縄戦の裏面史に迫る「沖縄スパイ戦史」だ。民間人を含む20万人以上が犠牲になった沖縄戦は、1945年6月23日に組織戦戦闘が終わる。だが、北部では10代半ばの少年を中心にした過酷な遊撃戦が続いていたことを映画は教える。少年たちの部隊は秘密戦教育の特務機関、陸軍中野学校出身の青年将校によって村ごとに組織され「護郷隊」と呼ばれた。正規部隊に編入された学徒の少年兵部隊「鉄血勤皇隊」とは別の組織である。そのゲリラ戦で戦車への特攻など絶望的な戦いに挑み、約160人が戦死した実相が元少年兵らの証言であぶりだされる。精神に異常をきたすなど足手まといになった者は、命令で幼なじみの手で射殺されたという。情報が敵に漏れないように住民をマラリアのはびこる島へ強制移住させる、住民同士を監視させて密告させる組織をつくる、さらにスパイ・リストに基づく住民虐殺・・・。映画が伝えるのは、軍が住民を手駒のように使い、本土決戦に向けた「捨て石」とした沖縄戦のやりきれない闇の深さだ。軍隊は本当に住民を守る存在なのか。監督をした三上智恵さんと大矢英代さんの問いは、今も続く沖縄の問いでもあろう。』

 

 現在、東京の「ポレポレ東中野」やその他の劇場で先行上映されている。是非、多くの人に観て欲しい作品である。(E・T)