【Bunnmei ブログ】
■イラン戦争が「終わった」(トランプ)のは本当か?
2026年5月1日、1973年制定の戦争権限法(War Powers Resolution)が定める60日間の期限が到来しました。同法はベトナム戦争への反省から生まれたもので、大統領は議会への通知から60日以内に軍事行動を停止するか、作戦継続のための議会承認を得なければならないと定めています。トランプ政権は2月28日の対イラン攻撃開始後、3月2日に議会へ正式通知しており、解釈にも幅がありますがその期限がまさに今週到来したわけです。
これに対しヘグセス国防長官は4月30日の議会証言で、「現在停戦中であり、60日のカウントは停止・中断している」と主張し、議会承認は不要だと述べました。しかし、トランプ大統領は5月1日付の書簡で議会に対し「2月28日に始まった敵対行為は終了した」と通告しています。トランプの理屈は「戦争を大統領権限で開始したが、戦争権限法に従い60日以内に停戦した」と。(だから議会は黙っていろと。)しかしこの主張は、法的にも実態的にも極めて疑わしいものです。
戦争は本当に終わったのでしょうか。答えは「否」です。4月8日の停戦合意はパキスタンの仲介による暫定的なものであり、米軍はイランの石油タンカーを阻止する海上封鎖を今も継続しています。イランはホルムズ海峡の実効的な通航規制を維持しており、4月24日にはイラン革命防衛隊がMSCフランチェスカ号を拿捕するなど、海上での対立は現在進行形です。停戦後もイラクのクルド地区に対して16件以上のミサイル・ドローン攻撃が行われており、またレバノンではイスラエルとヒズボラの戦闘が断続的に続いています。民主党のブルメンタール上院議員が「封鎖だけでも継続的な戦争行為だ」と述べた通り、空爆こそ止まったものの、国際法などに照らせば海上戦争と代理勢力を通じた戦闘は継続しているのです。
■米国議会からの突き上げは続く
議会内の反応も一枚岩ではありません。共和党のコリンズ上院議員は「60日の期限は提案ではなく法的要件だ」と政権を批判し、共和党内の一部議員も承認決議を求める声を上げています。上院では民主党による戦争権限制限決議が6度提出されましたが、50対47と党派を超えた大差ではなく僅差で否決されており、議会の分断が鮮明です。政権は「時計の一時停止(暫定停戦の日をカウントしない)」という前例のない解釈を主張していますが、憲法学者の多くはこれを法的根拠のない拡大解釈だと批判しています。
この「停戦と言う名の戦争継続」「低強度戦争」において、注目すべきは各アクターの利害構造です。まず、米国とイランのいずれも、現時点では交渉終結を必ずしも急いでいない可能性があります。トランプ政権にとって低強度戦争の継続は、「何の成果もなく戦争を止め」るわけにはいかないという国内向けの「成果」さがしの時間稼ぎです。これには五月中のトランプ・習近平会談での「成果」も皮算用に入っているでしよう。一方イランは、核交渉を「最終段階」に先送りする14項目提案を提出しており、制裁解除と海上封鎖解除を先に得た上で核問題の交渉力を温存しようとしています。これはトランプの足元を見た強気の要求です。つまり双方が「決着」よりも小突き合いを続けながら成果を引き出そうとしています。
■中国の立場 短期終結目指すが戦争長期化もよし
中国の関与も見逃せません。パキスタンとともに仲介役を担っており、ホルムズ海峡はサウジアラビアやUAEを含む中東産油国からの輸送路として中国経済の生命線でもあります。短期的には中国は停戦維持と完全終戦に強い利害を持つ一方、反対に米国がイランの核問題で強硬姿勢を取り続けることで米国が泥沼にはまり、経済的、軍事的消耗を図れるうえに国際政治の中で孤立化を深めることになります。中国は、中東での影響力を拡大できるという「漁夫の利」「一石二鳥」を期待しているでしよう。そのうえ、イラン問題で動きのとれないトランプに大豆やレアアースのサービスと引き換えに「台湾不関与」を言わせる工作をしているでしよう。
今後のシナリオとして最も可能性が高いのは、現状(海上封鎖合戦)の長期固定化です。核問題という根本的な両国の対立、イランの高濃縮ウランをめぐる米国のレッドライン、イランの濃縮権利主張は短期的に解決できません。次いで、枠組み合意への移行というシナリオがあります。核交渉を後回しにした暫定的な停戦協定が成立する可能性で、2015年の核合意(JCPOA)の構造に近い形になるかもしれません。最も危険なのは交渉決裂・戦闘再開のシナリオで、トランプ大統領は「悪いことをすれば攻撃再開もあり得る」と警告しており、海峡での偶発的衝突が引き金になりかねません。
まとめに入りますが、このように法的に言えば「戦争権限法上の戦争は終わった」というトランプ政権の主張は成立せず、実態として限定的とはいえ武力紛争は継続しています。米国内の圧力は高まりトランプ不人気は拡大するでしよう。この「形式的停戦と実質的戦争の乖離状態」こそが、2026年の米イラン関係を規定する本質的な構造と言えるでしょう。繰り返しますが、トランプ政権も、イランの革命防衛隊も、中国政権も、インフレや物資不在で諸国民の生活がますます劣化することなど眼中にないのです。彼らは、権力にしがみつくばかりなのです。(了)
イラン民衆の偉大な解放闘争と 米国・イスラエルのコソ泥的介入
泥沼化しつつある米国・イラン戦争 民衆こそ自国の政府に反対し戦争を止めよう









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