【Bunnmei  ブログ】

 

 

 

2026年4月、エール大学とテキサス大学の研究チームが発表した論文が、霊長類学と人類学の両分野で大きな注目を集めています。ウガンダのキバレ国立公園に生息する世界最大のチンパンジーコミュニティ「ンゴゴ・チンパンジー」が二つの派閥に分裂し、7年間で24頭が殺されるという前例のない集団間暴力が記録されたのです。この研究は単なる動物行動学の報告にとどまらず、「なぜ人間は戦争をするのか」という根源的な問いに新たな視点を投げかけるものとして注目されています。

 

■研究を主導したアーロン・サンデル准教授が強調するのは、このチンパンジーの対立に言語も民族性もイデオロギーも存在しなかったという事実です。引き金となったのは、有力なオスのリーダーが相次いで死んだことによる権力の空白でした。序列と支配をめぐる緊張が派閥を生み、かつての仲間が敵へと変わっていったのです。チンパンジーの社会本能は本質的に「上か下か」という垂直軸で構成されており、集団の内外を問わず、支配・縄張り・序列が暴力の根本的なエンジンとして作動します。この構造は1970年代にジェーン・グドールがタンザニアで記録した「ゴンベ戦争」でも観察されていましたが、今回は人為的介入のない純粋な自然条件下での記録であり、学術的価値はさらに高いと言えます。

 

サンデル氏はこの発見をもとに、人間の紛争が主にアイデンティティや文化の違いによって引き起こされるという通説に疑問を呈しています。民族・宗教・イデオロギーといった文化的要因は、戦争の原因というより、すでに存在する対立に後から貼られた「旗印」に過ぎない可能性があるというのです。隣町の不良グループ同士の抗争や、スポーツサポーター同士の衝突を思い浮かべれば分かるように、人間もまた文化的差異とは無関係に集団間暴力を起こします。その深層には、チンパンジーと共通する支配・序列・縄張りをめぐる本能的な緊張が存在していると考えられます。

 

■しかし人間の戦争は、チンパンジーのそれと同一視できない重要な差異も持っています。人間には「対等性による協力」という、チンパンジーには見られない社会本能が備わっているからです。狩猟採集社会では、強者が横暴になると他の成員が連合してそれを抑制する「逆支配」の仕組みが広く見られ、これが長老制度や魔術師による仲裁、後には「公権力」といった制度的協力へと発展しました。人間は集団内部において対立を抑制し、協力による利益を引き出すことができる唯一の霊長類と言えるでしょう。これはサルはもちろん類人猿とも区別される人類の決定的な特質です。

 

ところがここに、人間の戦争が持つ深い逆説が潜んでいます。南米アマゾンのヤノマミ族の事例が示すように、原始的な人間社会では戦争が単なる対外的な縄張り争いにとどまらず、集団内部における男の価値や社会内部の序列を決定する装置としても機能していました。戦闘経験のある男ほど婚姻上の優位を得るという構造は、戦争が対外的暴力と対内的統合という二重の性格を調合しながら機能していたことを示しています。例えば、集団内部が協和的であればあるほど、共通の敵との戦いがその紐帯をさらに強化するという逆説的な構造が生まれるのです。

 

■チンパンジーの戦争が個々のオスの序列本能の集積からくる延長に過ぎないとすれば、人間の戦争は家畜などをめぐる実利のトラブルもあるが、その上に「男の誇り」「共同体の名誉」といった共同体内部の社会意識に係る燃料が加わった複合体です。そして最も皮肉なことに、対等性による協力という人間固有の高い能力が、より組織的で持続的な対外暴力を可能にしています。次元を異にするのでここではこれ以上述べませんが、国家・軍隊・イデオロギーは皮肉にも「集団内の協力の産物」でもあるのです。

 

今回のチンパンジー研究が示した最大の意義は、戦争の「文化的説明」の下に眠る、より根源的な社会的・生物的エンジンの存在を可視化したことにあります。人間の戦争を理解するには、本能を基底に共同意識=文化とさらには国家支配というの三層を見据えた弁証法的な視点が不可欠であることを、この研究は改めて教えてくれています。(了)

ボノボにおける社会統治としての 稀な「処刑」を観察 | ワーカーズ ブログ   

 

【資料】チンパンジー同士の「戦争」に科学者が注目

 殺し合いで24頭死ぬ 人類の好戦性解明の鍵に?

 | The Independent (Japanese)

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イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区ヘブロンで行われた市議選の投票所で、投票前に投票用紙に記入するパレスチナ人の高齢男性(2026年4月25日撮影)。(AFP=時事)

▲ヨルダン川西岸、ヘブロンの投票風景、市議会選挙。AFPより

 

2026年4月25日、パレスチナ自治区でヨルダン川西岸とガザ地区の一部を対象とした地方議会選挙が実施されました。ガザでの投票(一部でのみ実施)は、ハマスが勝利した2006年の立法評議会選挙以来、実に20年ぶりのことです。

 

歴史的意義

 

今回の選挙は、2023年10月7日のハマスによる越境攻撃と、それに続くイスラエルのガザへの大規模攻撃が始まって以降、初めてパレスチナ住民が投票する機会となりました。主導したのはヨルダン川西岸に拠点を置くパレスチナ自治政府(ファタハ)です。本来は全土での実施を目指していましたが、ガザでは戦火を免れた中部の都市デイル・アル・バラのみで実施されることとなりました。

 

アナリストたちはこの選挙を、「ガザが将来のパレスチナ国家の不可分の一部である」というメッセージを国際社会に発信するための象徴的な試みと位置づけています。戦後のガザにおける「統治の正当性」を問う、事実上の試行でもありました。イスラエルの攻撃と抑圧の中、なにはともあれ「民意」を公然と示す意義は計り知れない重要性があります。

選挙の結果と実態

選挙の結果は、アッバース議長率いるファタハ支持派がヨルダン川西岸のほぼ全域、およびデイル・アル・バラでも最多議席を獲得しました。ヨルダン川西岸での投票率は約53〜56%と一定の水準を保ちましたが、ガザのデイル・アル・バラでは登録有権者7万人のうちわずか約23%しか投票しませんでした。避難生活を余儀なくされた住民の政治的不信と生活困窮がそのまま数字に表れた形です。

なお、ハマスは公式には候補者を出しませんでしたが、ハマスと連携していると見られる候補者が一部リストに名を連ねており、今回の結果がハマス支持の指標として注目されています。

イスラエルと米国の対応

イスラエルはこの選挙を快く思わず、選挙資材(投票用紙・投票箱など)のガザへの搬入を阻止しました。住民と選挙管理委員会は現地で投票用紙を印刷し、投票箱を自前で調達することで対応しました。イスラエルにとって、自治政府がガザで統治実績を積み上げることは警戒すべき事態ですが、一方でネタニヤフ政権はガザからハマスを排除するため、アッバース政権の存在を一定程度利用しようとしているという見方もあり、その立場は複雑です。

米国のトランプ政権は、ファタハとハマスの双方を排除し、「テクノクラート(技術官僚)」による非政治的な委員会がガザを統治するという独自の戦後構想を推進しています。自治政府主導の今回の選挙とは相容れない方向性であり、米国は賛同せず、距離を置く姿勢を取りました。

今後の困難

選挙は実施されましたが、前途は極めて険しいと言わざるを得ません。アッバース議長は90歳で、法定任期をはるかに超えて在任を続けています。国政レベルの立法評議会選挙や大統領選挙は2006年以降一度も実施されておらず、自治政府そのものの民主的正統性が問われています。

 

また、ハマスは依然としてガザで一定の影響力を保持しており、ファタハとの対立構造が解消される見通しはありません。米国の構想やイスラエルの思惑、そしてパレスチナ内部の権力闘争が絡み合う中、今回の選挙は「ポスト・ハマス」のガザ統治をめぐる主導権争いの幕開けに過ぎません。

 

焦土と化したガザで民意を問うことの困難さは、約23%という投票率が雄弁に語っています。それでもなお投票所に向かったパレスチナの人々の姿は、政治的混乱と人道危機のただ中にあっても、民主的な意思表示への意志が生きていることを示すものでもありました。この選挙が再建事業への一歩となるよう声援を送りたいと思います。(了)

 

低投票率の中、約52万2000人のパレスチナ人が地方選挙に投票|ARAB NEWS

 

パレスチナ人は本日、ガザ地区での戦争勃発後初となる選挙で投票を行う。 - Pravda 日本

南海トラフや首都直下だけじゃない、

超巨大地震が北海道で発生する!? 

海底の地殻変動調査で わかった衝撃事実!

 400年に1度のM9クラス!

 - 週プレNEWS

 

2011年に発生したマグニチュード9の東日本大震災で、地震と津波で大きな被害を受けた宮城県気仙沼市付近2011年に発生したマグニチュード9の東日本大震災で、地震と津波で大きな被害を受けた宮城県気仙沼市付近

 

15年前にマグニチュード(M)9の東日本大震災が発生し、10年前にはM7.3の熊本地震が起こった。そして今、M8クラスの南海トラフ地震発生の可能性が高まっているという。しかし、それだけではない。実は北海道でもM9の超巨大地震が起こるかもしれないという調査結果が出たのだ! どこにいても地震の脅威があることを忘れてはいけない!

* * *

【北海道沖の地殻が32mほど変形している!】

現在、マグニチュード(M)8クラスの揺れが起こる「南海トラフ巨大地震」の発生が懸念されている。また、首都機能がマヒし、死者1万8000人にも及ぶ「首都直下地震」も心配されている。しかし、大地震の恐怖はこのふたつだけではない。北海道にも超巨大地震発生の可能性が迫っているというのだ。

それはどんな規模で、どのような地震なのか? 調査を行なった東北大学災害科学国際研究所の富田史章助教に聞いた。

「北海道沖(千島海溝)では、約400年に1度の間隔で巨大地震が発生していることは、地質調査である程度わかっていました。

北海道の太平洋側の沿岸地域に、過去数千年間にわたり大きな津波が何回も来ていたことがわかる痕跡(津波堆積物)があるんです。

ただ、『その津波が本当に地震によるものなのか』『今後も地震が発生するのか』などについては、不透明な部分が多かった。そこで今回、私たちは千島海溝の地殻変動の様子を調査しました。

海溝型地震は、海のプレート(太平洋プレート)が陸のプレート(北米プレート)の下にどんどん沈み込んでいき、陸のプレートの端がそれに伴ってぐんぐん押されて変形していきます。そして、陸のプレートが変形に耐えられなくなってポーンと戻ったときに地震が起こります。

今、どれくらいプレートにひずみがたまっているかなど、地殻変動の様子は内陸部ならGPSで計測できますが、海中は電波が通らないので計測できません。

では、何を使って計測するかというと音波です。音で距離を測るための装置を海底に設置し、その海上まで船で行ったり、ドローンなどを飛ばして音波を出す。すると、海底の装置が返事をするのにかかった時間からお互いの距離がわかります。

船やドローンの位置はGPSでわかるので、このふたつを組み合わせると海底の装置の位置が特定できるんです。

私たちは、この観測装置を用いた海底観測点を3ヵ所に設置して、2019年から5年間計測を続けました。5年間でどれくらい海底の地殻変動が起きたかを調査したんです」

その調査から何がわかったのか?

「海のプレートと千島海溝に近い陸のプレートの海底の観測点が、ほとんど同じスピードで年間約8cm動いていることが確かめられました。これは海のプレートと陸のプレートが、境界で固着している(完全にくっついている)ことを示しています。

図の中央やや右下にある3つの矢印が海底の観測地点。海のプレート(G23)と陸のプレート(G22)が、年間約8cm西北西に移動していることがわかった。陸上の矢印は国土地理院の観測による動き(図は富田氏のプレスリリースより作成)図の中央やや右下にある3つの矢印が海底の観測地点。海のプレート(G23)と陸のプレート(G22)が、年間約8cm西北西に移動していることがわかった。陸上の矢印は国土地理院の観測による動き(図は富田氏のプレスリリースより作成)

日本周辺では、海のプレートは年間約8cmのスピードで動いています。固着していなければ、海のプレートが陸のプレートの下に8cmほどスルスルと沈み込むだけで、陸のプレートは変形しません。

しかし、固着している場合は海のプレートが沈み込んだぶんだけ陸のプレートが変形します。この変形が、将来的に地震が発生するためのエネルギーになります。

前回、この地域で巨大地震が起こったとされているのが約400年前です。仮に年間8cmの動きが400年間続いていたとすると、32mほど陸のプレートが押し込まれて変形しているということになります。誤差なども踏まえて試算すると20.5~30mです。これは、非常に大きな変形です。

例えばM7の地震だと地震時に解消される変形(すべり)は1mくらいです。M8でも数m~10mいかないくらい。

11年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の変形は最大で約60mでしたが、その半分でも大きな津波を起こすには十分に大きな変動です。もし巨大地震によって30mのすべりが生じた場合、北海道の太平洋沿岸地域に最大20m近い津波が押し寄せる可能性があります。

約400年前に北海道沖で起きた巨大地震は、津波堆積物からM8.8程度だったと推定されており、今回の調査から前回と同程度の巨大地震が、いつ起きてもおかしくないと考えられます。

また、もし約400年前の地震よりも広範囲ですべりが起これば、マグニチュードはそれより大きくなる可能性も否定できません」

東日本大震災とあまり変わらない、M9クラスの巨大地震が明日にでも起こる可能性があることが、今回の調査でわかったというのだ。

【千葉県房総沖でもM8級の地震が!】

こうした超巨大地震の発生には〝地震空白地帯〟が関係していると富田氏は言う。

「北海道の太平洋沖は、地震空白地帯と呼ばれています。陸に近い場所では地震が活発に起きていますが、陸から離れた千島海溝に近い所ではほとんど地震が起こっていません。小規模な地震もないんです。

記録されている地震は約400年前の巨大地震だけです。そこから考えられることは、ふたつあります。

ひとつは、地震がまったく起きていないということは、『地震を起こすようなエネルギーが蓄積されていない』場合。海のプレートが陸のプレートの下にスルスルと滑り込んでエネルギーが蓄えられていない状態です。

もうひとつが『完全に固着していて、小さな地震も起きずにエネルギーをどんどん蓄えている』場合。北海道沖は後者でした。

宮城県の沖合を震源とした東日本大震災も、陸に近い所ではM7程度の地震が30年に1度くらいの間隔で起きています。しかし、日本海溝に近い沖合では、非常に長い間活発な地震活動がなかった地震空白地帯でした。南海トラフの辺りも小さな地震は少なく、ここも地震空白地帯と言ってもいいでしょう」

北海道沖、南海トラフ、首都直下、千葉県房総沖地震の推定・想定震源地。この中で北海道沖、南海トラフ、千葉県房総沖は地震空白地帯と呼ばれている北海道沖、南海トラフ、首都直下、千葉県房総沖地震の推定・想定震源地。この中で北海道沖、南海トラフ、千葉県房総沖は地震空白地帯と呼ばれている

ということは、地震空白地帯で起こる地震は巨大地震につながりやすく、逆に言えば地震が頻繁に起こっている所には、巨大地震は襲ってこないということなのか。

ちなみに、今年に入ってから関東地方では、震度3以上の地震が9回起こっている。

「実はそうとも言えないんです。地震空白地帯でも、陸に近い所では地震活動が活発だったりしますし、内陸の活断層で起こる地震もあります。最近、関東地方で地震が多いからといって『エネルギーが解放されているので大丈夫』とは言えません。

大事なのは、大きな地震が起こるかどうかは、実際にプレート境界の断層に近い所で地殻変動の様子を調査してみないとわからないということです」

では、今後はどのように地殻変動の調査を行なうのか?

「今回の調査で千島海溝に設置した観測点は3点ですが、昨年、十勝沖に新たに観測点を設置しました。日本海溝については現在、23地点で観測を続けています。

千島海溝と日本海溝の北部は、内閣府も巨大地震が発生してもおかしくない場所として想定しているので、観測点をさらに増やしたいと思っています。

それから、もうひとつの海域は千葉県の房総沖です。すでに2年前に観測点を設置しています。ここは1677年に房総沖の日本海溝沿いでM8の『延宝房総津波地震』が発生し、非常に大きな津波があったことで知られています。

ただ、このときの記録が非常に少なく〝謎の地震〟ともいわれているんです。ですから、ここで巨大地震が発生する可能性があるのかどうかを調査しています。

1677年の地震では、東京のほうにも津波が押し寄せたと考えられているので、しっかりと調査したいと思っています」

北海道沖の海底に設置された観測装置。この装置で5年間、千島海溝の海底の変形を調査した

北海道沖の海底に設置された観測装置。この装置で5年間、千島海溝の海底の変形を調査した

 

北海道沖では、M9クラスの巨大地震が、いつ発生してもおかしくないという。また、千葉県房総沖でもM8クラスの巨大地震が起きる可能性があるという。

巨大地震の脅威は、西日本の南海トラフだけではない。東日本の北海道や東北、首都圏にもあるということを、しっかり意識して、日頃の備えをしてほしい。

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米国の軍事力とドルの力が消えつつある【コラム】

 : 社説・コラム : ハンギョレ新聞

 

イランは米国に対抗し、「接近拒否・領域拒否」戦略に成功したことになる。強力な軍事力を持つ中国はどうだろうか。米国は中東の石油の自由な流れを保証する存在でなく、むしろ妨害する存在となった。イラン戦争は米国に対する信頼を打ち砕いてしまった。米国の軍事力が混乱だけを招き、各国はドル依存を減らそうとしている。

25日(現地時間)、米国フロリダに戻った後、メリーランド州アンドルーズ統合基地に到着し、大統領専用機から降りて手を振っている米国のドナルド・トランプ大統領=プリンスジョージズ/AFP・聯合ニュース

 

 イラン戦争によって、米国の覇権と世界的な影響力の2本の柱である軍事力とドルが失われつつある。

 高価な高度精密誘導兵器や空母などの重厚長大型の装備に基づき、圧倒的な海・空軍力の優位で相手を制圧する米国の軍事戦略は、イラン戦争で破綻した。米国の軍事力はホルムズ海峡の近辺にも到達できず、アラビア海などの遠距離から高価な高度精密誘導兵器を用いてイランを攻撃したが、イランはミサイルやドローンによる反撃能力を維持した。イランは中東の米軍基地の早期警戒レーダーや早期警戒機などを破壊した。

 

 高度精密誘導兵器に基づく戦略は、米国が1970年代のソ連とのデタントの際に本格的に推進した。米国は基本的に、戦略兵器の量的制限である戦略兵器制限条約(SALT)などの一連の軍縮条約で両国の兵器量を抑制しつつ、自分たちは兵器の質的改良を進めた。ステルス戦略爆撃機、戦略巡航ミサイル、高度な迎撃ミサイルなど、高価な高度精密誘導兵器の開発がこのころから本格化し、現在の米国の軍事力の主軸となった。

 

 当時の米国の産業構造の転換と軍需企業の利害に沿ったものだ。1970年代のオイルショックをきっかけに、米国は競争力に劣る製造業を新興国に渡し、知識産業で再編した。このような産業の現実のもとで米国の軍需企業は、高価な高度精密誘導兵器を少量生産しながらも、より多くの利益を得ることができた。米国は産業再編に成功し、競争力を再び確保し、ソ連崩壊につながる体制上の優位を確保した。

 

 50年が経過した現在、米国はこのような高価な高度精密誘導兵器に基づく圧倒的な海・空軍力の優位戦略がイラン戦争では通用しないという現実に直面した。ミサイルの能力が普遍化したことに加え、多品種で大量生産されるドローンなど、コストパフォーマンスに優れた兵器が米国の高価な兵器を消耗させ、その威力も低下させた。イラン戦争の前から、いわゆる「弾薬格差」、すなわち、精密誘導兵器の消耗と不足が懸念されていた。40日間におよぶイラン戦争の間に米国は、トマホークや統合空対地長距離巡航ミサイル(JASSM)、スタンダードミサイル、パトリオット、THAAD(高高度防衛ミサイル)などの攻撃用および迎撃用ミサイルの在庫の30~80%を消耗し、深刻な不足に直面している。何より、このような兵器の在庫を再補充するには6年が必要だとされる。現在の米国の製造業の現状では、安価な兵器の多品種大量生産は不可能だ。

 

 「接近拒否・領域拒否」戦略は、大洋を越えて軍事力を投入する米国の攻撃を撃退しようとする中国の主要戦略だ。イランは米国に対抗し、「接近拒否・領域拒否」戦略に成功したことになる。強力な軍事力を持つ中国はどうだろうか。イラン戦争によって、インド太平洋における米国の戦力の劣勢は、懸念ではなく現実となった。

 

 米国の覇権のもう一つの柱であるドルも危うい。ドルの覇権はウクライナ戦争後、ロシアと中国が米国の制裁を避け、現地通貨による決済体制を作ったことで、本格的に穴が生じた。ドルの覇権はペトロダラー体制に基づく。1970年代のオイルショック後、中東の産油国がドルだけで取引を行い、そのドルを米国債に投資するシステムだ。米ドルの地位が強化され、米国は低コストで資金を調達することができた。

 

 世界的な危機が起きた場合はドルを求めることが基本原則だった。イラン戦争では通用しなかった。中東の産油国はホルムズ封鎖で石油を売ることができず、収益を得られなくなると、保有する米国債を売却した。イラン戦争で物価が上昇した石油輸入国も米国債を売り、自国通貨の切り下げを阻止しようとした。イラン戦争開始からの5週間で、ニューヨーク連邦準備銀行に保管されていた外国保有の米国債は820億ドル分が売却され、2兆7000億ドルにまで減少し、2012年以降で最低を記録した。米国債10年物の利回りは、戦争前の3.9%から現在は4%台半ばまで上昇した。外国の米国債の保有量は、2010年代初期の50%台から現在は32%前後にまで低下した。このため、米国の財政赤字は加速することになるだろう。

 

 何よりも、イラン戦争は米国に対する信頼を打ち砕いてしまった。トランプ大統領は戦争を起こして、石油供給システムを破壊し、ホルムズ封鎖を招きながらも、米国産石油を売る好機だと言っている。米国は中東の石油の自由な流れを保証する存在でなく、むしろ阻害する存在だと認識されており、今後もそうなる可能性が高い。

 米国は依然として大洋を越えて軍事力を投入できる唯一の国だ。ドルに匹敵する通貨は現時点では存在しない。しかし、米国の軍事力が混乱だけを招き、各国はドル依存を減らそうとしている。米国の覇権の2本の柱は消えつつある。

//ハンギョレ新聞社

チョン・ウィギル|国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1256028.html韓国語原文入力:2026-04-27 19:34
訳M.S

 イランを叩いたら同盟と覇権が崩壊【コラム】

【Bunnmei  ブログ】

 

 

私たちワーカーズは、もともと労働組合の活動家や平和運動の活動家などが集まり形成されました。ということで今では労働者「OG」や「OB」が増えてきたという次第ですが、労働者魂はまだまだ健在なのです。こんな集まりで出たのが、自分で「労働者」と自覚している人は今ではいるのか・・・といった提起でした。会員から様々な意見や発言がありました。そこでわたくしBunnmeiが、その話をネタにして、まとめてわたくしの意見を含めて四回連載で書きとどめましたので、でぜひご覧ください。あくまで分析は私です。

 

第一回 賃金の代わりに株をもらう時代

    ——「労働者」はどこへ

 

こんな話を聞きました。内部留保をたっぷり抱えた会社が、自社株を買い取り、それを従業員に配った——あるいは買い取らせた——というのです。賃金を上げる代わりに、株式による金融収益を「報酬」として与えた、ということになります。

 

「イマドキそんなことをやるのか」と驚く人がいる一方、「従業員持株制度は昔からあるじゃないか」と言う人もいます。どちらも間違いではありません。ただ、両者の間には見過ごせない違いがあります。

 

従来の従業員持株制度は、従業員が給与の一部を積み立て、会社が奨励金を上乗せして自社株を買う仕組みです。あくまで賃金は賃金として支払われた上で、追加的に株を持てる、というものでした。ところが今回の話は構造が異なります。会社はまず市場で自社株を大量に買い戻す。これを「自社株買い」と言います。この操作によって株価は上昇します。その株を従業員に渡すことで、賃金の代わりとする。リスクは従業員が負い、会社の人件費は圧縮される。賃金という「確かなもの」が、株価という「不確かなもの」にすり替わっているわけです。

 

これは単なる報酬制度の話ではありません。「あなたも会社の株主ですよ」と言われた瞬間に、何かが変わります。自分は雇われている側ではなく、会社を所有する側でもある、という感覚が生まれる。労働者としての自分が、少しずつ見えにくくなっていく。

 

では「労働者」とは、そもそも誰のことでしょうか。正規雇用で働く会社員だけでしょうか。非正規やフリーランス、ギグワーカーはどうでしょう。最近では「アンダークラス」という言葉も聞かれるようになりました。派遣や契約社員として働きながら、将来の見通しも立たない人々のことです。

 

かつては「労働者」という言葉に、ある種の連帯感がありました。同じ立場の人間が集まり、権利を主張するという文化がありました。しかし今、自分を「労働者」と意識している人は、どれほどいるでしょうか。株式報酬を受け取るホワイトカラーも、日雇いに近い形で働くアンダークラスも、それぞれ別の理由で、その自覚を持ちにくくなっています。

 

「労働者はどこにいるのか」——この問いを、この連載の出発点にしたいと思います。

読者からの手紙

関連する画像の詳細をご覧ください。石丸が選挙特番の裏金議員への『裏金マーク』に激怒「茶化しすぎて滑っている。敬意が足りない」 | まとめ式戦闘機


 安倍総理の情実人事によって、この度目出度く環境大臣と原子力防災担当大臣の座を見事射止めた有名な「自民党女ヤジ将軍」の丸川珠代氏は、実に見事な言行不一致の人でもあります。

 この人、夫婦別姓制度の導入に反対しているのですが、自分の戸籍名は大塚珠代なのです。つまり自分は通名を使っているのです。このように事実上、夫婦別姓を名乗っているにもかかわらず、「良心の呵責」もまた言行に何の矛盾も全く感じないほどの「鈍感」な人なのです。こんな人物が一体なぜ夫婦別姓に反対しているのでしょうか。

 さてこの大臣が就任後初めて福島第一原発を訪れての第一声は、何と「風評被害の払拭は福島復興に欠かせない」と述べたのです。まさに世界的に有名なコメディー・グループのモンティ・ハイソンも真っ青のブラックユーモアではあります。
 この報道写真(未発見=管理人)で赤いヘルメットを被っているのが、丸川大臣です。実に用意周到な服装ではありませんか。そもそも放射能汚染が軽微だというのなら、こんな防護服は着用する必要などないのです。

 東京大学経済学部を出たという丸川大臣は、「論より証拠」とか「百聞は一見にしかず」とか、または「百の説法、○一つ」とかの諺に示された庶民の認識論を理解できているでしょうか。

 この写真を一目見た庶民は、丸川大臣の多言を弄びながらの「重装備」に思わず、今に引き続く放射能汚染の深刻さを痛感した事でしょう。実際、丸川大臣の言葉は全くの無駄口だったのです。

 本当に、丸川大臣が放射能汚染を軽微で心配する必要が無く、単なる「風評被害」だというのなら、お付きの者は兎も角として自分は過剰なまでの防護服の着用を拒否して、国会議事堂に登院する時のような服装で福島第一原発の事故現場を「自民党女ヤジ将軍」よろしく、そこら一帯を堂々と自由に闊歩し、一番深刻だとされている第三炉の現状を把握してくれば好いだけのことなのです。

 歌舞伎であればここで大見得を切るところではありましょう。ここは丸川大臣の大失敗でした。

 丸川臣が「尊敬してやまない」安倍総理が放射能はアンダーコントロールされていると既に国際的に請け合っているのですから、放射能汚染ごときを今更何で恐れる必要があるのでしょうか。

 まさにここではその言行一致が強く求められていたのです。しかし実行が全く伴わなかったことで丸川大臣は、またまた面目を潰してしまったと言わざるを得ません。

それにしても事実は実に雄弁で、福島第一原発では放射能汚染が今も深刻な事を問わず語りの内に語ったのです。(猪瀬)

折口晴夫

 

4・25~26.その2!

 午前中は引き続き勉強会、「労働者」という言葉は今日的にはどのようにとらえられているのだろうか。とりわけアンダークラスという言葉を聞くようになった今、「正規労働者」のみがその対象なのか。自らを「労働者」と自覚している労働者はどこにいるのだろうか、それすらあやふやになっているように見える。

 

 昼過ぎ帰阪、午後、中之島で「反ヘイト・入管法改悪反対」の集会があり参加。大阪駅の北側まで、初めてのコースをデモする。そのあと、引き続きヨドバシカメラ前でスタンディング。「高市ヤメロ・戦争反対」のコールが続いた。道路の反対側でもペンライトが光っていたが、どこが主催なのも定かではなかったが、とりあえず参加した。

夜、疲れ果て、雨に打たれて帰宅。

 

折口晴夫

 

4・25~26.その1!

 25日朝早く、新幹線で東へ、〈水木しげるの妖怪「百鬼夜行展」〉に行く。その後、午後から泊りがけで勉強会参加。警察・検察が冤罪を作り出す、その過程や意図など考える。再審法改正を阻むそうした力に対抗しなければ・・・

 

阿部 治正

 

■幕張メッセでの国際武器見本市開催に反対しよう!

●武器見本市とは何か

来年4月28日から30日にかけて、千葉・幕張メッセにおいて国際武器見本市(DSEIJapan)が開催されようとしています。昨年の見本市には、イスラエルの軍需企業20数社も参加し、「実戦で確認された能力」を誇示しました。

武器見本市は、兵器産業と各国政府・軍が結びつき、武器の売買や軍事協力を促進する場です。そこでは「安全保障」や「防衛」という名のもとに、実際には戦争の準備と拡大が進められています。

いま世界では、ウクライナ戦争、ベネズエラ軍事攻撃、イラン戦争、米中対立の激化など、緊張が高まり続けています。こうした状況の中で、武器見本市はその流れをさらに加速させる役割を果たしています。

●日本が加担しようとしている現実

日本政府は近年、「防衛力強化」の名のもとに軍事費の大幅増額を進め、武器輸出の解禁・拡大へと踏み出しています。幕張メッセでの武器見本市開催は、この流れ加速させるものであり、日本が「武器を売る国」へと急速に転換していく象徴的な出来事です。しかしこれは、憲法の平和主義とも、戦後日本社会が築いてきた理念とも明確に矛盾するものです。

●背景にある資本主義の行き詰まり

ここで、私たちはもう一歩踏み込んで、この問題の背景を見る必要があります。

現在の経済は、利潤率の低下と「長期停滞」という構造的な行き詰まりに直面しています。生産や民需の拡大によって利潤を確保することが困難になる中で、企業は新たな利潤源を求めています。その一つが、軍事であり戦争です。

戦車やミサイルはどんな現実的な富も生み出しません。産業機械や輸送機械や医療機器のように、モノの再生産プロセスには入らず、人命と健康の守る再生産にも寄与しません。ただただ、社会が生み出した富=国家財政に寄生し、それを奪う吸血行為を行っているに過ぎません。武器が実際に使用されれば、それは町や工場を破壊し、大量の人命を奪います。使用されなければ、それは社会の重荷として市民生活を押しつぶします。軍需産業は国家の財政支出によってのみ支えられ、安定した需要が保証される特殊な分野です。そのため企業は、国家と結びつきながら、軍拡を通じて利潤を確保しようとしています。

言い換えれば、現在の軍拡は単なる安全保障政策ではなく、資本主義の危機に対する「国家依存的な延命装置」としての性格を強く持っています。

●国家依存の強まりと軍拡の不可分性

かつての資本主義でも国家との結びつきは存在しましたが、現在はそれが質的に強まっています。

金融支援、財政支出、規制緩和だけでなく、軍事・安全保障そのものが大企業の利潤確保の中核に組み込まれているのです。その結果として、軍事費の拡大、武器輸出の解禁、軍需産業の優遇、戦争への関与の拡大が、一体のものとして進行しています。

幕張メッセでの武器見本市は、まさにこの構造の具体的な現れです。

● 認識の非対称性という問題

しかし、ここで重大な問題があります。それは、こうした事態に対する「認識の非対称性」です。

大企業や政府の側は、現在の資本主義の危機の深刻さ、つまり資本を生産的に投資しようとしても、もはや資本として成り立つ十分な利潤が上がらなくなった現実をシビアに認識し、その打開のために強い決意を持って軍拡や国家依存を戦略的に進めています。そして今や生産部面での剰余価値に依存しないで巨大な利益を得る方法を見つけたと勘違いしているGAFAMなどのプラットフォーム企業、レント資本がこの軍需にも群がり始めています。

それに対して、私たちも含めて運動の側には、軍拡の背景にある経済構造の変質への理解が不十分で、問題を個別政策の是非にとどめてしまう、危機の深刻さに対する認識が相対的に弱いといった傾向が見られます。これは、かつて日本の労働運動が、企業の側が利潤率の低下に見舞われて、資本主義システムの存続をかけた死に物狂いの搾取強化の攻撃を仕掛けてきた時に、その背景の深刻さを理解できず、企業の攻撃に屈していったことに似た状況です。

この認識のギャップは、運動の広がりや持続力に直接的な制約を与えています。私たちは、労働運動の敗北の轍を市民運動において繰り返すわけにはいかないのです。

●認識の克服なしに運動の前進はない

もし私たちが、武器見本市を単なる「好ましくないイベント」「過度にならない規模にとどめるべき」とだけ捉えるのであれば、それに対抗する力は限定的なものにとどまるでしょう。

求められているのは、いま資本と政府が自らの体制の危機の未曽有の深刻さを理解し、それを軍拡と企業利潤とのより直接的な結合、国家と大企業の一体化を通して克服しようとしている構造を、全体として捉える視点です。その上で、「なぜいま軍拡なのか」、「なぜ企業や政府は武器見本市開催にこれほどまでにこだわるのか」を人々に向かって明らかにすることです。

この認識の深化なしには、市民運動が大きく前進することは困難です。

●私たちに求められているもの

いま必要なのは、武器見本市に反対する声を上げること、軍拡政策の転換を求めること、そして同時に、その背景にある経済構造の質的変化についての理解を共有することです。

幕張メッセを、戦争への入口にしてはなりません。私たちは、戦争ではなく平和を、軍拡ではなく生活を、

利潤ではなく人間の尊厳を守る社会を求めます。

ともに声を上げましょう。

 

【Bunnmei  ブログ】

 

 

今迫りつつある日本のナフサ危機は、単なる供給隘路ではなく、複数の構造的矛盾が同時に露呈した連鎖的な動揺、と理解できます。

 

■「備蓄はある」が大丈夫ではない

 

「備蓄はある」という政府説明は一面の事実ですが、その備蓄の主体は長期保存に適した重質・高硫黄原油であり、精製してもナフサをほとんど抽出できません(ガソリンなどのエネルギー系中心)。統計上の在庫量がいかに潤沢であっても、プラスチック・農業資材・医薬品包材・繊維など日本の基幹産業が必要とするナフサの実供給量は、物理的な制約によって絞られています。これはすり替えです。

 

このように、日本では限られた原油からガソリンや軽油を優先的に抽出する「ガソリンシフト」が存在します。社会インフラとしての輸送燃料を優先するのは政治的にも合理的ですが、その結果としてナフサの生産量はさらに圧縮されます。「ガソリンは大丈夫」と「ナフサも大丈夫」は同時に成立しないのです。

 

加えて、そもそも中東情勢に関する将来の不確実性を直視した素材メーカーは受注制限という「防衛的供給制限」に踏み切らざるを得ません。また精製プラントの完全停止(再開に困難がある)を避けるための最低限在庫確保も優先されます。これらは経営者の非合理な不安から生じたものではなく、政府が明確な見通しを示せない現状において、むしろ極めて合理的な経済的防衛行動です。政府がこれを「目詰まり」と呼んで解消を求めるのは、民間の合理性を否定して自らの楽観論を正当化する言論操作に他なりません。

 

さらにこの問題の根底にあるのは、中東危機の解決展望が見えないという現実です。「備蓄が半年ある」のが事実として、仮に軍事的緊張が六か月後に緩和されたとしても、ホルムズ海峡をめぐる地政学的構造、イランの国際的地位、サウジアラビアの増産政策、米国の中東関与の形態、これらすべてが「元通りになる」可能性はほとんどないというのが、現実を見据えた経営者の共通認識です。つまり今回の危機は一時的なショックではなく、戦後日本が中東依存という構造的脆弱性の上に築いてきた産業体制そのものへの問いかけとなっています(また最後に述べます)。

 

■米国が引き起こした中東危機は日本直撃

 

そしてこの連鎖はナフサにとどまりません。原油価格の上昇は肥料価格を押し上げ農業コストを増大させ、食料価格へと波及します。医療品も同様です。エネルギー・食料・医療は相互に結びついた一つのシステムであり、そのどこか一点の不安定化が全体へ連鎖する構造にあります。

 

外交面においても深刻な問題があります。欧州・英仏はトランプ政権とは距離を置きつつ、イランとの対話・合意形成に向けた独自の外交的動きを見せています。これはホルムズ海峡の安定に直結する現実的アプローチであり、エネルギー安全保障の観点からも注目すべき動向です。しかし高市政権はこうした脱トランプ的な多極的外交の潮流に対して冷淡であり、依然として米国一辺倒の姿勢を崩していません(この背後には対中国包囲網戦略が見え隠れします)。

 

中東の安定なくしてナフサ・ガソリン問題の構造的解決はあり得ず、その安定を外交によって追求しない選択は、エネルギー安全保障を事実上放棄することを意味します。経済安全保障が売りの高市政権ですが米国にすがるだけの外交が、今まさにその限界を鋭く露呈しているのです。

「今は大丈夫」「経済を委縮させない」という政策判断は短期的な合理性を持ちながらも、国際政治の展望や中東一本足構造を先送りし、それによつて無秩序な経済収縮を加速させるリスクをはらんでいます。

 

■中東問題の棚上げの半世紀

 

日本の中東原油依存という構造的脆弱性は、1970年代のオイルショック以来、半世紀にわたって「知りながら放置」されてきた問題です。その背景には、石油・石化業界と自民党族議員・経済産業省が形成してきた共依存の政治構造があります。構造転換は既存産業の利益を直撃するため、政治的に「触れにくい問題」であり続けました。

 

同時に日本は長期にわたり米国から貿易黒字を上げてきました。この「外貨」(ドル)で原油を毎年買い込むことが、「ペトロダラー循環」を支えることであり、日本の米国に対する忠誠心の証として認められてきたこともあります。日本は仮に可能であってもロシアやインドネシアや他の国から原油を大量に買うことは、ドル体制の維持のために選択肢から外されてきたのでした。

 

加えて、中東原油が長期にわたって安価であったことが、企業にとっての現状維持を経済的に合理化し、政府がコスト負担を求める政治的意志を持てない状況を固定化しました。さらに日米安保体制のもとで、ホルムズ海峡の安全は事実上アメリカに外注され、日本はエネルギー安全保障を自国問題として内部化する必要を免れてきました。

 

この「安い原油・米国の傘・ドル防衛・族議員政治・官僚の省益」が互いを支え合う構造が、問題認識を行動に転化させない政治的慣性を生み出してきたのです。高市政権の現在の対応はその延長線上にあります。しかし今やトランプ政権の中東政策の変容による大混乱がはじまり、全ては台無しになりつつあります。歴史を直視し、転換を主導する政治的意志が、今まさに問われています。(了)

 

ナフサ危機の現実 「在庫はある」と言う政府見解が通用しない理由 | ワーカーズ ブログ   

 

「産業のコメ」ナフサ不足が 日本の製造業を直撃しつつある | ワーカーズ ブログ