2016.7.12ワーカーズ事務局

 参院選挙は、自民党の勝利と改憲勢力の3分の2の議席確保をもたらした。

安倍自民党による争点隠しもあって、有権者は安倍政治の継続を選択した。安倍自民党は、アベノミクスという名のカンフル剤ばかりの対症療法を一枚看板に、改憲の野望は封印したままの選挙戦に終始させた。結果は、土着利権や業界利権で形成された既得権集団という底堅い支持基盤もあって、参院でも無所属議員も含めて改憲発議可能な3分の2の議席を確保した。

 対する野党は、アベノミクスの破綻と改憲阻止で統一候補も揃えたが、堅い利権構造に乗っかった自公の与党勢力を追い詰めるまでには至らなかった。

 有権者はアベノミクスを積極的に支持していたわけではない。世論調査でも、期待はしないがもう少しやらせてみよう、という消極的支持が多かった。議席の上では自民党がほぼ参院の半数を獲得したとはいえ、比例区での得票率は約35%、自民党は3分の1の支持しかない権力政党であることには変わりはない。

 それでも安倍自民党が多数を獲得した主因は、民進党などが対症療法でしかないアベノミクスへの有効な対抗策、すなわち成長と利潤至上主義の経済や社会システムを協働型経済へと大胆に転換すること、それを具体性と現実感をともなう形で提示できなかったことだろう。安倍政権の唯一のセールスポイントを我らの対抗戦略で圧倒する、このことの不充分さが最大のウィークポイントになり、結果として政権への消極的支持というカベを突き崩すことが出来なかったと受け止める以外にない。

 ともあれ、無所属議員も含めて衆参で3分の2の議席を改憲勢力に与えてしまった結果は重大だ。有権者は改憲発議可能な議席を好戦的な安倍政権に与えるという、いはばパンドラの箱を開いてしまったことになる。秋に想定される臨時国会以降、安倍首相主導による改憲論議と改憲策動の動きは強まるだろう。改憲策動に対する警戒や闘いがこれまで以上に緊迫度が増すことになる。現に安倍首相は、国会の憲法調査会での議論を進めると公言している。議席の力をバックに、国家機密法や戦争法のケースと同様、様々な場面で数の力で押し切る腹づもりなのだろう。

 秋に開かれる臨時国会では、緊急経済対策という名目の大規模な財政出動が既定路線となっている。後発国の経済停滞や英国のEU離脱などで予想される経済の低迷への対処策だという。その場面でも片手に大型補正予算による経済のテコ入れを掲げ、他方では改憲策動と、これまで多用してきた使い分け政治が繰り返されるだろう。財政の大盤振る舞いをテコとして、改憲路線を暴走する安倍政権にストップをかける闘いは、まさに正念場を迎えることになる。なんとしても反転攻勢の包囲網を拡げていく以外にない。

 参院選では争点隠しで水面下に止まっていた改憲策動も、今後は中央政治の攻防戦の前面に浮上してくるだろう。安倍首相に改憲発議の選択枝を与えてしまった今、憲法改正を問う国民投票の実施を前提とした闘いが求められるだろう。有権者は改憲を争点に掲げなかった安倍自民党をはじめとした改憲派に白紙委任したわけではない。たとえ議席の上で改憲勢力が3分の2を占めているとはいえ、国民投票で安倍改憲を阻止することは十分可能だ。先のイギリス議会では大多数が残留派だったにもかかわらず国民投票では離脱派が勝利した。議席の数と民意は、日本でも乖離している。改憲策動との攻防戦は、私たち1人1人の有権者に直接かかってくる。これからが正念場なのだ。

 私たちは、大企業優先の対症療法でしかないアベノミクスに対する対抗戦略を練り上げ、戦争国家へとばく進する安倍自民党をなんとしても少数派に追い込んでいく必要がある。今日から、デモなどの直接行動も含めて全国至る所で安倍暴走政権を少数派に追い込む闘いを拡げていきたい。