マクラーレンが非常に高い期待値を持って今シーズンに臨んでいたのはどうやら間違いないようです。
マクラーレンは、2018年の期待外れなスタートを受けて、技術的な運営体制を見直しており、シャシー担当CTOのティム・ゴスがその最初の犠牲者となると BBC Sport が報じているそうです。
更迭とは穏やかではありません。
勝手な推測ですが、昨年散々「グリッドのベストシャシー」とか、「きちんとしたエンジンがあれば、我々には表彰台に上がれるクルマがある」と豪語していたのをマンスール・オジェらオーナー達が真に受け、ザク・ブラウン以下に非常に大きなプレッシャーが掛っているのだと思います。
で、ティム・ゴスが最初のスケープ・ゴートとして供せられた、と。
例えば、レッドブルが成績が低迷したとしても、「リアル・ベスト・シャシー」設計の中心であるエイドリアン・ニューウェイを更迭する事は絶対に無いでしょう。
ニューウェイの下、パフォーマンス改善に取り組む筈です。
ところが、マクラーレンのデザイン・チームは、ティム・ゴスはシャシー担当CTOで、他にもCTOが居るという不思議な組織で、空力担当CTOがピーター・プロドロモウ、チーフエンジニアリングオフィサーがマット・モリスとなっていて、最終的に誰が責任者なのか良く分からない組織になっています。
総責任者が居ないので、総責任者のリーダーシップの下、協力して改善していく代りに、誰かに責任を押し付けたという事でしょうか。
昨年の「ベストシャシー」設計の中心人物の1人を更迭してしまえば、ベストでは無いシャシーを設計した人物しか後任候補はいない訳です。
ベストでは無いシャシーを設計した人物の方がティム・ゴスよりベターなのであれば、そもそもティム・ゴス(のチーム)はベストではなかったという事になってしまうような・・・
まして、全体のまとめ役が存在しない組織では・・・
そもそも誰かが更迭されるような酷い成績とも思えません。
そうだとすれば、昨年まで成績不振の原因を全てホンダに押し付け、シャシー側を客観的に評価してこなかったツケが回って来たという事なのだと思います。
ですが、ブーリエは「『MCL33』の設計アプローチがあまりに保守的なものだったかもしれない」と不振の原因をデザインチームに押し付けてしまいました。
こんなマクラーレンでは働きたく無いですよね。ティム・ゴスの後任を探すのも大変そうです。
やはりこのチーム最大の弱点はチームマネジメントにある気がしてなりません。
また、こんな記事も出ていました。
マクラーレン、トップスピード不足解消を目指して“異なる哲学”を実験
マクラーレンの哲学と言えば、空気抵抗を犠牲にしてでもダウンフォース優先、ですね。
ティム・ゴス更迭?のタイミングでこういう記事が出ると、哲学の信奉者が居なくなるから、異なる哲学にトライ出来る、みたいな印象を受けてしまいます。
が、この哲学もティム・ゴスが創始者では無く、ホンダ第二期の頃には既に言われていた事ですから、彼是30年以上の歴史を持つ哲学で、ティム・ゴスは継承したに過ぎません。
空気抵抗を犠牲にしてでもダウンフォース優先、と言うと聞こえは良いですが、トップチームよりも、フロアから得られるダウンフォースが小さいとかメカニカルグリップが足りないためにリアウイングを立てて補っていたとも考えられます。
ドラッグを減らして、果たして必要なグリップは得られるのか、興味深いところです。
想像以上のグリップ不足に陥った時、CTOの交代がテクニカルチームの迷走を招きそうな気もしますし、今日からのアゼルバイジャンGPが楽しみです。