紡ぐ(第68回 春の院展) | 石谷雅詩 Masashi Ishigai 日本画 Blog

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その時が来ることは覚悟していたつもりだったが、
いざその時が来るとあまりに突然のことに感じ、現実感が未だにない。



僕の絵画人生は物心つくより前、
父の紅い油絵具を口の周りにベタベタに付け、
「カドミウムはいかん!!」
と父が慌てふためいた事から始まるかもしれない。
※(カドミウムとは油絵具の紅や黄の顔料に使用される人体に有害金属のこと)

物心つく頃には、父に自分が描いた絵を自慢していた気がする。
その頃には父は絵かきの夢を断ち、会社員として生きていた。

中学3年の頃、
父に絵画教室へ通わさせられた。
様々な習い事はしてきたが、これ以外は長続きしなかった。

受験時代は、仕事疲れのなか父にも指導をしてもらい、
浪人することなく美大へ入学した。

その4年後の大学院入学のとき、
弟が同じ大学・専攻へ入学してくる。

大学院を卒業し、院展を含め様々な場所で作品を発表するようになれば、
父は会社関係者に進んでDM・招待券を配ってくれた。
もちろん父自身も可能な限り展示会場へ足を運んでくれた。

そして7年前、
父は大腸癌を患う。
幾度の手術を乗り越えてきた。
癌はそれでも消えず、さらには肺へ転移し、長年抗がん剤と共に病と闘ってきた。

そして5年前。
これを機に、
長年の父の夢だった絵画教室を弟と三人で立ち上げることになった。
父と意見がぶつかり合う場面を何度も乗り越えながら、
5年のあいだでようやく教室もなんとかかたちになってきた・・・。

そんな気がしていた矢先、今年の1月28日。
父が亡くなった。

出張先の東京で倒れ、
家族全員で9日間つきっきりで父を見守った。
最期は癌ではなく、肺炎だった。
会話ができなくなり、筆談になり、それもできなくなって、意識もなくなって・・・。

すべてを見届けた。



父は、僕にとって絵を描く大きな理由の一つだった。

今、父が亡くなるまでの9日間で見たものをテーマにしています。


その結果の一つが春の院展に入選しました。
重たい案内で申し訳ないですが、ここにだけ記しておきます。

ぜひご高覧ください。


< 第68回 春の院展 >
3月27日(水)~4月8日(月)

日本橋三越本店 本館7階ギャラリー

入場料:一般・大学生700円/
高校・中学生500円[小学生以下無料・税込]
午前10時~午後6時30分[午後7時閉場]
※最終日は午後5時まで[午後5時30分閉場]