映画『おもかげ』を見ました。じんわりと迫ってくる心理ドラマです。
(あらすじ)
幼い息子を失った女性の希望と再生の旅路を描いたミステリードラマ。エレナは元夫と旅行中の6歳の息子から「パパが戻ってこない」という電話を受ける。人気のないフランスの海辺から掛かってきたその電話が、息子の声を聞いた最後だった。10年後、エレナはその海辺のレストランで働いていた。ある日、彼女の前に息子の面影を持つ少年ジャンが現れる。エレナを慕うジャンは彼女のもとを頻繁に訪れるようになるが、2人の関係は周囲に混乱と戸惑いをもたらしていく。
監督 ロドリゴ・ソロゴイェン
キャスト マルタ・ニエト ジュール・ポリエ アレックス・ブレンデミュール アンヌ・コンシニ
過去の出来事が人間を苦しめます。幼い息子に何がおこったのか、そしてなぜパパは戻ってこなかったのか、息子からの電話に母親の心は乱れていきます。その電話も10分ほどで切れてしまいます。
映画はその10年後に飛びます。10年前の出来事を整理しきれない母親は息子が消えた海岸で働きます。普通に生きているようでありながら、息子の死んだ場所で働くことは心がゆがんでいる証拠です。そしてその小さな歪みが小さな狂気を生みます。本人はそれと気が付かないまま回りの人からは変人とみなされていきます。正気と狂気は紙一重。地面がゆっくりと傾いて行くような感覚に襲われる作品です。息がつまります。
いつかこの心の傷は癒されることがあるのでしょうか。時間が解決してくれるのでしょうか。自分のことのように苦しくなります。
狂気は普通の真面目な人ほど陥る罠です。どれくらいの狂気がこの世の中にはあるのだろう。不安が押し寄せる映画でした。