高さ2~3mくらいの金網で仕切っている駐車場だったと思う
その金網を隔てた暗闇の空間に大量の人が見えた
金網に手を掛け張り付いている人もいた
その人たちだけでも何十人といる
その何十という人が僕を見ていた
僕を見つめる何十という無言の視線
あの光景を、僕は忘れることができない
僕は金網沿いに駐車場の出入口に向かって歩きだした
僕が歩くのと平行に金網を隔ててぞろぞろとついてくる
金網はガシャガシャと音を立てていた
誰かが何かを叫んでいたが、何を言っているのかがよくわからない
駐車場に入るのを躊躇ったが行くしかなかった
入ったとたんに囲まれた
とりあえずチケットを掲げて、そこに書かれている番号を読み上げた
それが始まりの合図だった
上空に掲げた僕のチケットをひったくろうとする手が何本も伸びてくる
それを払いのける手も何本も伸びてくる
僕を中心にもみくちゃ状態になっている
すでに身動きがとれないほどの密着状態になっている
僕はチケットを取られまいと死守している
なぜこうなっているのか意味がわからなかった
順番にタクシーに乗るもんだと思っていた
それがなぜかこのお祭り状態
僕はこんなとこでなにをしているんだろうって思った隙に誰かがチケットをひったくった
それでこのお祭りはおしまいになった
誰でもいいから渡せばよかったのかと思ったのだが疑問が残った
たしか空港が提携しているタクシーは少数だったはず
それがこの大量の人・人・人
そしてチケットの奪い合い
おかしいと思ったが、それを確かめるすべがなかった
こうなった以上は、僕のチケットをGETした男の車に乗るしかなかった
後方の席に乗せられた
次いで、男も運転席に乗り込んだ
すると助手席に別の男が乗り込んできた
後方のドアが開き、僕の横にも別の男が乗り込んできた
「え!?」っと思ったが、すでに車は暗闇に向かって走り出していた・・・