純愛小説である。
主人公はインテリアデザイナーである。上司よりもデザイナーとしての腕は上である。
ある日自分の会社がデザインして、上司に手柄をとられた喫茶店で女性と出会う。女性はみゆきと名乗る。喫茶店では高校卒業以来のつきあいである悪友と待ち合わせしていた。あまりにも魅力的なみゆきに後ろ髪を引かれながら、店をあとにする。
みゆきとは約束をする。
木曜日の夜に会おうと。
しかし、メールや携帯の番号など連絡先は交換しない。
気が向いたときにやってきて、相手がいればそのまま食事に行こうと約束する。
もしも相手が来なくても気にしない。何回かこなければ、相手はもう別の土地に移ったのだろう、と思うようにする。
仕事が多忙になったりして、みゆきになかなか会えない主人公。会えない時間が美由紀に対する気持ちを高めてゆく。
表現力に関しては、それほど高くない。
映画のように描写主体の小説を期待したのであるが、そうではなく説明主体でちょっとがっかりした。だが、逆に読みやすいのではないだろうか。又吉に触発されて書いたらしいが、文章力はさすがに又吉のほうが上である。
物語の構成に関しては、さすが北野武、と思わせる部分がある。
結末、主人公が取る選択は、読者によっては「バッドエンドではないか」とやきもきするものである。大落ちなので言えないが。ずっと、べたな展開が続いて、「こち亀かよ」と内心突っ込んだ。このまま終わるんじゃないか、と危惧していたが、さすがである。その選択は正しいのか? ともやもやした者が残る。ただ、定義的に言えば、そうでないと純愛にはならないのである。
読み終わった後、皮肉に笑う武の顔が浮かんだ。
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