ちいさな者へ | 友野雅志の『TomoPoetry』

友野雅志の『TomoPoetry』

日々書きためている詩をのせます。noteには下にのせています。https://note.com/mtomono





目が覚めると
きみは河の向こうから
こちらを見ている

すべてが破壊され
まだ煤が熱をもっている
時を
目覚めるには早すぎると
眠り あるいは
生がはじまる前の
かなしみの笛が鳴る前の
わたしを
きみは水で流しさろうと
あおい眼を
ふくらませ わたしが腰をおろした星を
ぴっしょり濡らす

言葉から言葉へ落ちていく
いのちは
透きとおった卵
時よりも
すこし先で
割れていく

ちいさな者よ
忘れてはいけない
歪んだ顔の
おだやかに静かな眼を
そこからきみの
記憶と呼吸ははじまる

かなしい音楽が
泡だちながら
きみを洗っていく

ちいさな者よ
わたしは流れていく
きみの咽喉を
いくつかの和音となって

空から落ちてくるわたしは
きみの足を洗う

さあ きみが
歩きはじめる時だ
裸足の肌に
歴史の針が
雲と風を
そして死のにおいを刺し入れる

きみをながれる河に浮かぶ
燃える柱
音たてる言葉
きらきらゆれる
青いひかりは
わたしが見ている
きみの
歩みがゆらす時間だ

まもなく
雨の音のなかに
きみの名を呼ぶ声がする
眼をとじて
歩きはじめよ

ちいさな者よ