ある雑誌の記事を見ていてあれ? と思うことがあった。
少し前になるが、別の経済学者さんも同じような事をおっしゃっているということをYAHOOニュースで見ていて(少し前のためURLまで示せないが・・) なんだかおかしいなと思っていたのだが、またも同じ発言に遭遇してびっくり。
雑誌名や発言者については明記しないが、有名な経済雑誌であり、発言者は有名なニュース解説者である。
1.概略
雑誌の特集は「ファクトフルネス」
正確なデータと事実に基づいて世界を正しくみる習慣をつけようというのがファクトフルネス。この特集として有名ニュース解説者とある人の対談形式の記事。
以下、「」部分は記事そのまま。
(著作権にひっかかるのかな・・ でも事実を伝えるべきと判断してそのまま記載)
〇〇が ニュース解説者
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内閣支持率について、読売と朝日で何故違うかということに対して
「〇〇:新聞に中の方のページには、そうした調査方法と質問内容が載っています。
そこを見なければなりません。つまり結果だけでなく、必ず元データに当たる
ことが肝心です。」
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たしかにその通りだと思います。定義を曖昧にした数字ほど危ないものはないですから。
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”ニュース・データの見方、使い方、落とし穴”
コロナウイルス対策として・・・
「いま活かされる膨大な内部留保
〇〇:国内に話を戻すと、リーマンショック以降、日本企業の内部留保が多すぎるという話がありました。18年度に463.1兆円に達しており、「なぜそんなに溜め込むんだ。儲けは株主に還元せよ」とか、「従業員の給料を上げろ」とかという批判に対して、企業は「先が見通せないから、念の為に溜め込んで置くんです」と言い訳してきました。
その貯めこんだ現金を今使えば、雇用が確保できるはずなんです。」
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その裏付けなのか、内部留保の統計グラフが記載され、その出典が、法人企業統計とある。
(ところが何年の統計かまでは明記していない)
ちょっと待て! 内部留保だの現金があるだのと言っているが本当か? と思って調べてみた。
2.調査した結果
〇〇さんが言う通り、法人企業統計という元データをあたってみる。
最新の法人企業統計 はhttps://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/2019.10-12.pdf にある。
これは財務省の文書で、企業の損益や資産、負債、純資産といった確定申告で出すデータを集計したものらしい。
細かい資料なので隅々まで呼んだわけではないが、なんとその資料には「内部留保」なんて言葉は出てこない。
関係しそうな部分だけ抜き出して書いてみる。(PDFが保護されていてコピペが効かないので必要部分だけ抜き出して記載した。)
法人事業統計 2019.10-12 PDF 22/25ページ |
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1.全産業 資産・負債・純資産、及び 損益 単位:億円 |
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大分類 |
中分類 |
2019年10-12月 |
純資産 |
資本金 |
1,000,531 |
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資本剰余金 |
1,646,180 |
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利益剰余金 |
4,792,052 |
さて、内部留保なるものはどこを示すのだろう・・。2018年の数値を見ていると、どうも利益剰余金の部分がそれらしい金額である。
仮に、「内部留保」なる言葉が、企業の「利益剰余金」だとするならば、〇〇さんの指摘は全くもって的外れである。
この事は、企業の帳簿(というか、貸借対照表と損益計算書という会計のシステム)をちょっと知っている人ならすぐわかることである。