またまた、もやっとした中世の音楽について。今回は記譜法についてまとめました。
イタリアなどヨーロッパを旅行したときに教会や博物館に飾られている四角譜が読めるとちょっと旅が面白くなりそうですね。
聖歌とその歌唱法の記録のためのネウマ譜
グレゴリオ聖歌の歌われ始めた中世前期はまだ五線譜は出現していませんでした。
当時はネウマ譜という図形で書かれていました。
ネウマ譜にも変遷があり、初期は線がなく歌詞の上に図1の最上段に記すように、線や曲線で抑揚が付記された程度でした。
その後、11世紀前半になる頃、イタリアのアレッツォの修道士グイードが音高をより正確に歌えるように線を引いたといわれています。
最初はファに引かれ次にドにも追加され、やがて12世紀になって4本線と■による四角譜という記譜法が考案されました。
しかし、その後印刷による出版がされるようになると、オリジナルのネウマ譜の微妙な曲線は印刷には向かなかったため、四角譜によるグレゴリオ聖歌が出回るようになり、細かな表現が記されたネウマ譜は見られなくなってしまいました。
図1 ネウマ譜(ザンクトガレン系)と四角譜の例 (拝領唱より, Communio VI、グレゴリオ聖歌選集より)
四角譜の例をいくつか図2に示します。
ハ音記号とヘ音記号の2つがあり、共に凹んだ箇所がそのドやファの位置です。
中央の音階は凹みのところがドになりますので順に下からミファソラシドレミになります。
図の下段は四角譜の見方ですが、グループ音の左端の縦に線でつながれた音符(ぺスという)は下から読みラ-ドと歌います。
小さい菱形符のついた音符(クリマクス)の菱形は下降音で付けられますが音価は短く隣接する音に影響され融化します。
Nの形の音符(ポレクトゥス)ですが、斜めの線はグリッサンドや音階ではなく音の上限下限を表します。
右端のノコギリ型の音符(クリィスマ)は前後の音を滑らかにつなげる経過音を表し、直前の音は伸ばされます。
図2 四角譜の音部記号と音階の表記
ただ、以上の記譜は音の長さを正確に表現したものではありませんでした。まだこの時代は拍子がなく、点(プンクトゥム)と四角い線付きの点(ヴィルガ)が、それぞれ音の短い/長いの違いを示しているだけで、定量的な記譜ではありませんでした。
また音高も、ドやファの位置が基準に記されていましたが、ドが何Hzとは決まってなかったのです。
その場に集まった僧侶のピッチの取り方次第で、ネウマ譜の上下は相対的に上がるか下がるかを示している程度です。
ネウマ譜や四角譜はこれまで口伝だったものをメモしただけのようなものですが、それでも記録という点では大きな進歩だったわけです。
残念ながら文字数制限のため、続きは次のページに!
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音楽と楽器の研究:
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筆者(横山真男)のHP(楽譜のダウンロードもできる作品リスト)
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