2022.5.6一日一季語 早苗(さなえ《さなへ》) 【夏―植物―仲夏】
あをあをとして生きてゐる余り苗 岩田由美
捨て苗あるいは余り苗とは、旨く根付かない苗が出た時等のために田植えの際余った苗を田圃の隅に植えておくものをいう。余った苗のことなどと、簡単に説明している辞書、歳時記もあるが、単に余っているだけでは無く、役目があるようです。呼び名はちょっと残念な命名であるが、ちゃんと生きているのだ。野球で言えば、代打、控えの投手のような存在であろう。使命が来る日があるかもしれない。そのために、生き生きと、あをあをと巣立っているのでしょう。
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【傍題季語】
早苗取(さなえとり《さなへとり》) 早苗束(さなえたば《さなへたば》) 早苗籠(さなえかご《さなへかご》) 苗運び(なえはこび《なへはこび》) 早苗舟(さなえぶね《さなへぶね》) 若苗(わかなえ《わかなへ》)
早苗田(さなえだ《さなへだ》) 玉苗(たまなえ《たまなへ》) 余苗(あまりなえ《あまりなへ》) 捨苗(すてなえ《すてなへ》)
【季語の説明】
水耕栽培の苗を苗代から、本田へ移し植える大きさに育った稲の苗のこと。
田植えが終わったばかりで、まだ苗が小さく、水面に太陽の光がまぶしく反射し、周りの景色が美しく映えるような田んぼを「早苗田(さなえだ)」という。そのみずみずしさをたたえて「玉苗(たまなえ)」という美しい呼び名もある。
関連季語
→ 田植
【例句】
捨苗の緑を捨てて昇天す 百合山羽公
早苗たばねる一本の藁つよし 福田甲子雄
早苗田の風も旅人道の駅 青木千秋
月山のうすうす見ゆる早苗籠 皆川盤水
法華寺の里に玉苗余りけり 大屋達治
【苗の生育】
水稲は現在は移植が機械化され、苗は育苗箱で育てられる。育苗箱はビニルハウスなど育苗施設に並べられる。苗代における、生育技術によって苗の素質が決まり、それは移植以降の本田での生育と収量に大きな影響を及ぼす。
【苗代について】
苗代は、水稲が直播(じかま)き栽培から移植栽培にかわった奈良・平安時代ごろから始まり、現在に至っているが、いろいろの形式が時代とともに変遷してきた。
(1)水(みず)苗代 もっとも古くからの方式で、常時湛水する。このため雑草の発生や鳥害は軽減させることができる。資材や労力は少なくてすむが、保温は水に頼るだけなので、苗は根張りが弱く、活着も遅い。
(2)畑(はた)苗代 畑状態で育苗するもの。とくに水田の一部を干してつくるものを陸(おか)苗代という。苗代用水の不足や暖地の二毛作地帯などで行われた。根張りが優れ、活着がよいじょうぶな苗ができるが、雑草や鳥害が多い。
(3)折衷(せっちゅう)苗代 水苗代と畑苗代とを折衷したもので、前期は湛水状態にし、中期は床の踏切溝(ふみきりみぞ)にのみ湛水し、後期は畑苗代状態にする方式である。初期は水により保温され、後期は根の生育が強化されるので、苗ぞろいがよく、活着が優れる。暖地の多収穫栽培に用いられた。(4)保温折衷苗代 折衷苗代と基本的に同じであるが、播種(はしゅ)後、焼籾殻(もみがら)を覆土し、温床用油紙やビニルシートで被覆して保温する方式で、初期生育が促進され、健苗ができ、しかも従来より早く田植ができる。昭和30年(1955)ごろより寒冷地の稲作の安定と暖地の早期栽培に貢献した。(5)ビニル苗代 保温折衷苗代あるいは畑苗代の上にビニルをトンネル状に被覆して保温するもので、ともにより早期の育苗を可能にし、かつ健苗をつくることができ、昭和40年代には寒冷地ではほとんどこの形式にかわった。(6)温床苗代 ビニル畑苗代の床下に醸熱資材あるいは電熱線を埋設して加温するもの。北海道や東北などの寒冷地で、より早期により安全に育苗する方式として用いられた。
現在の育苗の方式は、保温折衷苗代、ビニル苗代および温床苗代などの利点をとり、箱育苗に応用したものである。
[星川清親]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)
【今日は何の日】
鑑眞忌
唐の高僧で、日本に渡って日本律宗を開いた鑑眞の763(天平宝字7)年の忌日。
なお、鑑眞が開山した唐招提寺では、月遅れの6月6日を「開山忌」としている。
万太郎忌,傘雨忌
小説家・劇作家・俳人・演出家の久保田万太郎の1963年の忌日。
俳号の傘雨から傘雨忌とも呼ばれる。
春夫忌,春日忌
詩人・小説家・評論家の佐藤春夫の1964年の忌日。
ゴムの日
五(ご)六(む)で「ゴム」の語呂合せ。
ゴム製品のPRの為に制定。
コロッケの日
コロッケなどの冷凍食品を製造する株式会社「味のちぬや」が制定。
以下の図書、ホームページを参考、引用しています。
(合本俳句歳時記 第四版 角川学芸出版)
富山いづみ <admin@nnh.to>
(カラー図説 日本大歳時記 講談社)
(大人も読みたい こども歳時記 長谷川櫂監修)
( 季語と歳時記の会編著 小学館刊 )
(ウイキペディア)
(575筆まか勢)
(俳句のサロン)
(一般社団法人日本記念日協会)