2021.5.19一日一季語  麦の秋(むぎのあき)  【夏―時候―初夏】

 

麦秋や出土の土器に指のあと 田中佐知子

 

最新の考古学の世界では、「縄文時代から農耕が始まっていた」という新事実が発見されたという。『タネをまく縄文人 最新科学が覆す農耕の起源』(吉川弘文館)第5回古代歴史文化賞大賞受賞。発売日:    2015/12/18より。

日本でいつ頃から「むぎ」が栽培されていたかを知るには、遺跡の発掘調査で見つかる炭化麦が大きな手掛かりになるという。麦は土器などの底に炭化した状態で残っているそうです。

縄文土器自体に残された縄文人の指の跡。そして麦秋の季語により、縄文時代から麦と深い関係を思うと、浪漫にかき立てられます。

 

 

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【傍題季語】

麦秋(むぎあき) 麦秋(ばくしゅう《ばくしう》)

 

【季語の説明】

歳時記では、「麦の秋」「麦秋」は、植物の項目では無く、時候の項目になります。「七十二候」には、「麦秋至(むぎのときいたる)」という侯があります。

あたり一面、初夏。麦の穂がたわわに実り、麦畑が黄金色に染まる5月下旬から6月初旬のこの時期が「麦秋」です。

麦が黄金色に熟して取り入れどきになる初夏のころをいう。「秋」は実りのときの意。

 → 麦刈

 

*2021.5.17  群馬県にて

 

【例句】

麦秋や頬に火の創ある仏      大橋敦子

行く他はなし麦秋の深轍      森岡正作

麦秋や古道に抜くる通学路    あさなが捷

麦秋の風の中なる牛舎かな    石黒興平

麦秋や対向車なき峠越え      斉藤マキ子

 

【麦の字の由来】

中国や日本の史書にでてくる「麥(むぎ)」は麦の旧字であり、この字を上下に分けると「來」と「夊」になります。 このうち「來」の字は、麦を表わす中国の甲骨文字(こうこつもじ)から生まれ、「夊」の字は向こうから来る、或いは上から降ることを意味しています。二つの字が合体して「麥」になった背景には、麦踏みをする姿を模したとする説や、西方から良い麦種(むぎだね)が伝わり古代周王朝が興隆したことを表わすとする説、麦が年を越して稔ることから来た説などがあります。

 

 

【麦にまつわる季語】

米と同様、太古から日本人の生活の中で重要な役割を担ってきた麦には、「麦秋」以外にもさまざまな季語があります。たとえば、「麦蒔(むぎまき)」は初冬、麦が強く育つように行う「麦踏(むぎふみ)」は早春、青々と育った様子を表す「青麦(あおむぎ)」は春、「麦扱(むぎこき)」「麦刈(むぎかり)」「麦打(むぎうち)」など刈り入れにまつわる言葉は初夏。さらに、麦が熟するこの時期に降る雨を「麦雨(ばくう)」、収穫のころに吹くさわやかな風を「麦嵐(むぎあらし)」といいます。季節のうつろいを麦にまつわる言葉とともに感じてみてはいかがでしょうか。

 

群馬県は、水はけの良い水田と冬のからっ風などの自然条件を活かし、水田の裏作として盛んに栽培されていて、その生産量は全国第4位と全国有数の産地です。うどんをはじめとした小麦を使った加工品も製造がさかんで、粉物文化と言われています。

 

九州で裸麦が見つかった縄文後期といえば、紀元前 1,000 年から同 300 年頃まで。中国では周の時代にあたります。九州で稲作が始まったのは紀元前 300 年頃ですから、裸麦はそれより以前に九州へ伝わり、大麦と共に関東まで広がったと考えられます。

 

 

【小麦粉を使った食品】

小麦粉を使った食品は実に多種多様です。パンの種類だけでもかなりの数が挙げられます。食パン、フランスパン、クロワッサン、具が入った調理パンなど。お菓子もそうです。ケーキ、ビスケット、カステラなどなど。

 

うどん、そうめん、冷やむぎなどの日本麺や中華麺も小麦粉が原料です。同じ麺類でも、うどんと中華麺、パスタ類では色も違うし、形状も食感も異なります。餃子やピザ、たこ焼き、お好み焼き、すべて小麦粉が使われています。

 

このように小麦粉はさまざまな用途に使われ、それぞれの用途によって求められる特性が違います。含まれるデンプンの性質が麺に向いている、パンに向いているとか、こねたときに伸縮性が強いとか、ソフトな感じに仕上がる、真っ白い色に製粉されるなど、小麦粉の加工性に求められる特性は複雑です。

 

小麦粉として使われるときの特性は小麦の品種によって決まります。私たちになじみのある「強力粉」「中力粉」「薄力粉」といった小麦粉も、それぞれ品種の違う小麦を製粉してできた粉です。小麦は品種によって含まれる「グルテン」というタンパク質の量が異なります。小麦粉の用途はこのグルテンの量と質やデンプンの性質で決まるといってもいいでしょう。グルテンの量が多い順に強力粉、中力粉、薄力粉に分けられているのです。

 

小麦には用途に応じてそれぞれに最適な品種がありますが、小麦は農作物ですから、日本の気候風土では今まで栽培できなかった品種もありました。そこで需要に合わせて、それぞれの用途に最適な銘柄の小麦を輸入し、食品に加工しているのです。

 

【麦の消費量など】

世界最大の小麦生産国は中国で約136,000千トンです。2位はインドで約107,592千トン、3位はロシア連邦で約83,000千トンです。ちなみに日本は約1,025千トンです。

 

お米の消費量は1年間に約53.0kgです。小麦粉の32.3kgは、うどんだけを食べたとすると約450杯分です。小麦粉はお米と並んで日本人の主食なのです。

※うどん約450杯分…中力粉100に対して食塩3、水35を足して作ったうどんの1食(生めんで約100g)当たりの小麦粉使用量で試算

 

出典:農林水産省「令和元年度 食料需給表(概算)」

 

 

【日本人と麦】

日本でも弥生時代の中期頃には、水田耕作とともに麦類が畑作生産されていました。私たちの祖先は、小麦を重湯(おもゆ)のようにして食べていたそうです。その後お粥や、粉にして平焼きにして食べるようになり、紀元前2,000年頃には今のパンに似た食べ物を作るようになりました。

 

うどん、そうめん、きしめんにあたる麺は中国から伝えられたものです。室町時代になると、おもに禅僧の点心(今でいうおやつ)として食べられていたようです。その後、日本の風土や嗜好に合うよう工夫されながら、日本独特の麺に育ってきました。

まんじゅうが誕生したのは、鎌倉時代の初め頃と言われています。

 

 

今日は何の日

ボクシングの日

日本プロボクシング協会が制定。

1952年のこの日、挑戦者・白井義男が世界フライ級チャンピオンのダド・マリノに判定勝ちし、日本初のボクシングのチャンピオンになった。

湯川秀樹博士のノーベル賞受賞、古橋広之進選手の水泳自由形世界新記録と並んで、敗戦でショックを受けた日本人の心に希望の灯をともした。

 

 

以下の図書、ホームページを参考、引用しています。

(合本俳句歳時記  第四版  角川学芸出版)

富山いづみ <admin@nnh.to>

(カラー図説  日本大歳時記  講談社)

(大人も読みたい こども歳時記 長谷川櫂監修)

( 季語と歳時記の会編著 小学館刊 )

(ウイキペディア)

(575筆まか勢)

(俳句のサロン)

    (一般社団法人日本記念日協会)