2021.3.29  一日一季語 蛍烏賊(ほたるいか)  【春―動物―晩春】

 

打ち寄せる波の色へと蛍烏賊    渡部稲穂

 

ホタルイカは全身が青白く光る、多くの謎につつまれた神秘的な生き物です。

ほたるいかの発光は、熱をもたないため「冷光」と呼ばれているそうです。これは昆虫のホタルの発光と同じしくみなのだとか。

青白い光が波の色と同化する、この句の景を実際にみてみたいものです。

この蛍烏賊のなまえについて、「ホタルイカ」になったのは、明治38年、東京大学教授の渡瀬庄三郎博士の命名によるものだといいますので、比較的新しい季語ではないでしょうか。

 

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*2021.3.26  板橋区のとある魚屋さんにて

 

【傍題季語】

まついか、こいか

*とある飲食店にて

 

【季語の説明】

ホタルイカはホタルイカモドキ科の小さなイカで、オホーツク海から日本海、および駿河湾以北の水深200~1000mの深海に棲みます。水揚げは、日本海一体、駿河湾、相模湾の太平洋側でも僅かですが獲れるそうです。

富山湾の幻想的な漁が毎年ニュースで流れる事もあり有名ですが、水揚げ量で最も多いのは浜坂漁港をはじめとする兵庫県で、2位が富山県だということです。

春に生まれ、翌春に産卵期を迎えて約1年で一生を終えます。腕や腹部に発光器を沢山もち、蛍と同じように青く光ることからホタルイカと呼ばれるようになりました。

 

【例句】

花の後はやも賜はる蛍烏賊           角川源義

あけぼのや紅透きとほる螢烏賊       角川春樹

螢烏賊汐たるゝまま食うべけり       高木晴子

真夜中の港を煌と蛍烏賊             菖蒲あや

螢烏賊畳目のごと並べられ           三枝幸子

 

 

【名前の由来】

その昔、ほたるいかは地元で「まついか」と呼ばれていました。その名が「ホタルイカ」になったのは、明治38年、東京大学教授の渡瀬庄三郎博士の命名によるものでした。

そもそも博士は、ホタルがどのような地域に棲んでいるかを調査しているときに、富山県に光を放つイカがいると聞き研究をはじめ、ホタルのように美しい発光をするイカであることから「ホタルイカ」と名付けたのです。

その後、ほたるいかの学名は博士の名前にちなみ「Watacenia sintillans(ワタセニア・シンティランス)」と命名されました。

 

 

【ホタルイカの漁】

富山県が沿岸に押し寄せてきたホタルイカを定置網で夜に漁獲するのに対し、兵庫県などでは主に昼間に行われる底引き網漁で一気に大量に水揚げされます。味などの質的には富山湾産のものが大きくミソの詰まり具合などもよく、高値で取引されています。

 

 

【富山湾の特別天然記念物】

ホタルイカは腕や腹部に1000個ほどもの発光器を持ち、夜の富山湾で行われる幻想的な網揚げの光景が観光名物にもなっています。

ほたるいかの大群の発光が見られるのは日本中で滑川近くの富山湾に限られています。

日中は沖合の200m~400mという深海に棲み、夜間に海面近く、しかも陸近くまで上がってくるのは産卵や餌生物を追うためといわれています。

富山湾で毎年3月~5月頃を中心にこのほたるいかの集群が見られるのは、富山湾のすり鉢のような地形と海流の関係(すり鉢状の底から上に向かって流れる湧昇流)で岸近くまで押されるためといわれています。

このホタルイカの乱獲を防ぐため、富山市水橋から魚津市にかけての海岸沿い約15㎞、沖合約1.3㎞の海域は、春にホタルイカの群れが押し寄せることから「ホタルイカ群遊海面」として国の特別天然記念物に指定されています。

 

 

【流通など】

ホタルイカは非常に傷みが早く、鮮度が落ちるとすぐに腐ってきます。その為、流通しているもののほとんどは水揚げされてすぐに釜茹でされてから出荷されます。スーパーなどで売っているものもそうして茹でられたものがパックに詰められて並んでいます。3月から4月の最盛期には極僅かですが生のままのものも出回ります。また、ここ数年、船上でビニールチューブに海水ごと詰められた生のホタルイカも出回るようになってきました。

 

 

【生食には注意】

生で食する場合は内臓を取り除きましょう。 ほたるいかの一部に内臓に有害な「旋尾線虫」という寄生虫が住み着いているものがあります。寄生している比率は7%(年度や漁獲海域によって多少異なるようです)これを生で食べると「腸閉塞」「皮膚病」をおこす可能性があります。

でもご安心を!この寄生虫は沸騰水に約30秒投入し加熱する、もしくは-30℃×4日以上冷凍すると死にます。だから市販されているボイルした「ほたるいか」や佃煮は問題ありません。また、弊社の沖漬けも寄生虫対策として冷凍処理をしており問題ありません。

 

 

今日は何の日

立原道造忌

詩人・立原道造の1939(昭和14)年の忌日。

 

 

 

以下の図書、ホームページを参考、引用しています。

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(合本俳句歳時記  第四版  角川学芸出版)

富山いづみ <admin@nnh.to>

(カラー図説  日本大歳時記  講談社)

(大人も読みたい こども歳時記 長谷川櫂監修)

( 季語と歳時記の会編著 小学館刊 )

(ウイキペディア)

(575筆まか勢)

(俳句のサロン)

    (一般社団法人日本記念日協会)