2019.3.6

一日一季語 啓蟄(けいちつ)  【春―時候―仲春】

 

 

啓蟄やどっち向いても大阪人      津田このみ

 

 

季語を上五に置くと、イメージが固定されやすいようにも言われるが、啓蟄の季語は、上五に置く句が多いように思います。

「や」で切れる俳句。切れ字の効果は、概ね次の三つだと思います。

 ①言い切った終止感

 ②言い終えていない余情

 ③展開の意外性

この句では、いきなり口語の展開がくる、③のパターンであろう。

右も向いても、左を向いても大阪人。作者のいる場所が、大阪なのだとわかる。ほかの設定もあるかもしれないが、こうした事は、詠み手の自由に任せるのも俳句。

季語、啓蟄の持つ力もある。虫が穴から首を出して、キョロキョロしている景も浮かんでくる。これは、季語が見事に効いているのだと思います。

 

 

 

【傍題季語】

驚蟄(ケイチツ)

 

 

 

【季語の説明】

二十四節気の一つで、新暦三月五日ごろにあたる。暖かくなってきて、冬眠していた蟻・地虫・蛇・蛙などが穴を出るころとされる。

関連季語

 → 蛇穴を出づ

 → 地虫穴を出づ

 

 

 

【例句】

啓蟄のいとし児ひとりよちよちと  飯田蛇笏

啓蟄の土かき消して雨となる      波多野爽波

啓蟄や掃きて塵にも翅のあり      井沢正江

啓蟄のものみな光さきだてて      平井照敏

啓蟄やキトラ古墳の星宿図        小宮山勇

 

 

 

【啓蟄とは】

啓蟄は旧暦の二月前半に当たり、二十四節気において3番目の春の節気です。

実際啓蟄に当たる三月上旬から中旬にかけてはまだ寒く、虫が冬眠から起き始める平均気温10℃を超えることが少ないため、「啓蟄」とはならないようです。

 

二十四節気は元は中国から由来しているため、若干の季節のずれが生じています。

 

 

 

二十四節気の啓蟄は、さらに二十四節気を3つにわり、一年を七十二の候で分けた七十二候では次の三つに相当します。

 

    蟄虫啓戸

    桃始笑

    菜虫化蝶

 

それぞれの候は5日ずつを意味します。

 

啓蟄の初侯は蟄虫啓戸と言い、読み方は「すごもりむしとをひらく」です。

土の中で冬眠をしていた虫たちが春の日差しを受けて暖かくなりだし、土から出てくるという時期を意味します。

虫と表記していますが、これは虫に限らずカエルやクマなどあらゆる冬眠をしていて目覚め始める動物を意味します。

 

啓蟄の次候は桃始笑と言い、読み方は「ももはじめてさく」です。

この時期は桃の花がつぼみから咲き始めるという意味を持ち、寒い中甘い香りを放つ桃園などに行きたくなる季節ですね。

 

啓蟄の末候は菜虫化蝶と言い、読み方は「なむしちょうとなる」です。

この時期は、越冬した蛹(さなぎ)が美しい蝶へと変わり始める時期を意味します。

菜虫とは葉物の植物につく青虫を意味します。

 

 

 

今日は何の日

啓蟄

地中にて動き始めていた虫類が、この頃になって被れた地殻から匍いでて来る陽気で桃始華倉庚鳴云々とあり桃の花も咲き始め倉庚(うぐいす)がさえずり始めるころとされている。

出典:歓喜宝暦 神霊館 榎本書店

 

 

菊池寛忌

小説家・菊池寛の1948(昭和23)年の忌日。

小説『恩讐の彼方に』、戯曲『父帰る』等の作品を残した。また、雑誌『文藝春秋』を創刊し、作家の育成、文芸の普及に貢献した。

 

 

()地久節・皇后誕生日

1927年から1988年まで。

香淳皇后(昭和天皇の后)の誕生日。天皇の誕生日を「天長節」と言うのに対し、皇后の誕生日は「地久節」と呼ばれた。

また、この日を「母の日」として、婦人会等を中心にいろいろな行事が開催されていたが、1949(昭和24)年ごろからアメリカにならって5月第2日曜日に行われるようになった。

 

 

世界一周記念日

スポーツ新聞の日

弟の日

 

 

 

主な出来事

1170

保元の乱に敗れ伊豆大島に流罪になった源為朝が追討を受け自刃(1177年とも)(新暦46)

1853

ヴェルディのオペラ『椿姫』が初演

1890

政府が三菱の岩崎弥太郎に東京・丸の内一帯を払い下げ。この一帯が「三菱村」と呼ばれるようになる

1893

神奈川県に属していた西多摩郡・南多摩郡・北多摩郡(三多摩)を東京都に編入。神奈川県が現在の形に

1897

東京・神田の錦輝館で日本で初めて映画が公開される

1957

河出書房が日本初の女性週刊誌『週刊女性』を創刊。倒産により4号で休刊し、8月から主婦と生活社によって復刊

1998

奈良県明日香村・キトラ古墳の内部の小型カメラによる調査で星宿図などを発見

 

 

 

誕生日

1475

ミケランジェロ・ブオナローティ (:画家,彫刻家,建築家)

1909

大岡昇平 (小説家『野火』『レイテ戦記』)

1947

宮本輝 (小説家『蛍川』『優駿』『泥の河』)

1955

春風亭小朝 (落語家)

1962

柳沢慎吾 (俳優,タレント)

1970

ハイセイコー (競走馬)

 

 

 

以下の図書、ホームページを参考、引用しています。

(合本俳句歳時記  第四版  角川学芸出版)

富山いづみ <admin@nnh.to>

(カラー図説  日本大歳時記  講談社)

(大人も読みたい こども歳時記 長谷川櫂監修)

( 季語と歳時記の会編著 小学館刊 )

(ウイキペディア)

575筆まか勢)

(俳句のサロン)

    (一般社団法人日本記念日協会)