初めてその女の人を見たのは、
自動車学校だった。
色とりどりの服装の中で
その人は、とても目立っていた。
170cm近い背丈
細すぎる体型
白いブラウス
黒いロングスカート
濃いピンクのサングラス
ツバの大きな黒い帽子
その人の第一印象は
変わった人がいる。
車校の生徒の間で評判だった。
車の運転を習いに来る
服装じゃなかった。
その時、年齢は多分35才くらい?
保育園に上がる前の娘さんを
連れて車校に来ていた。
担当の教官が同じだった事と
娘さんが、私に懐いた事で
何故だか、
その人に懐かれてしまった。
その人の名前は
独 とく子 さん ( もちろん仮名 )
珍しい名字。
服装も変わってましたが
名字も変わってる。
ついでに、性格も変わってる。
まだ10代の私に
上手く行かない自分の夫婦関係の
相談までしてきた。
独身の私にそんな話しして
どうなる?
ただ、聞いて欲しかっただけなの
かも知れないケド。
その頃 知り合った、主人の事も
気に入って、
こんな いい人に育てた
親御さんを見てみたい。
と、その 独 とく子さん、
主人の家まで義母に会いに行った。
(まだ、主人ではない)
ヤッパ、変わってる。
一緒にいたら私まで
変わった人 に見られる。
距離を置かなきゃ。
私も就職して 忙しくなったのを
理由に だんだん疎遠となり
スッカリその人の事は
記憶の外に。
それから10年
結婚して、母になり
子供達も少し手が離れた頃
パート募集のあった会社へ
面接に行った。
その時、募集のあった部署に
案内され、その部署の係長さんが
「 ここには、現在 男性が5人
女の人が6人。
後1人いますが、今入院中 で
休みです。」
と、話していた。
その後、晴れて採用となり
初めての出勤日。
私と もう1人採用された人とで
緊張の挨拶。
その時 働いていた人達が、
各々 自己紹介してくれた
その後に 係長が、
「 もう1人、独さん と言う人が
いますが、今お休みしていて、
そろそろ戻ってくる予定です。」
と、、、
独さん?
一度聞いたら 忘れられない
珍しい名字。
記憶が甦ってきました。
すぐ、隣に立っていた
先輩パートさんに
「 すみません、独さんて、
名前はなんていうんですか?」
先輩達
「 え~と。確か とく子さん。」
やっぱり、、
面接の時、独さんが
入院していなければ、、
または、
係長があの時 名前を言って
くれていれば、、
辞退したのに、、
まさか、車校生徒の間で
変わった人 と、言われていた人に
10年後 又、会うとは。
後は、独 とく子さんが
私を忘れていることを祈るのみ。
しばらくして 退院し、職場に
戻ってきた 独 とく子さん。
私を見るなり
「 mocoちゃんじゃ~ん。」
忘れてくれては いなかった。
でも、この 独 とく子さん。
あの うまく行ってなかった
ご主人とは既に離婚していて、
この入院中に知り合った
50代の男性と、スピード婚。
その人の仕事の関係で、
他県に行く事になり退職と
なりました。
私が入社して1ヶ月後の事でした。
私と一緒にパート入社した同僚、
独 とく子さんが辞めた時
「 私、30年生きてきて、
あんなに変わった人見たの
初めて。
一生忘れないと思う。」
って言ってました。
やっぱり変わった人は
誰が見ても
変わった人。
なんですね。