2人同人詩誌「群青」第33号(2015年6月・刊)より、こぐま星座さんの詩をアップする。先の6月30日の記事でアップした、僕の詩「終活」と同時に載った作品である。作者のご諒解は得てある。
心斎橋のホームレス
こぐま星座
駅の前に小さな緑地があって
日焼けした初老のホームレスが
ベンチで昼寝している
初夏
見ると男の右の手首に手錠がはまっていて
鎖でつながれたもう片方の手錠には
小さなトランクがつながっている
男の全財産がそこに入っているのだろう
男はそれを隠しているつもりだろうが
色を濃くし始めた植え込みの緑に
頑丈そうな革のトランクの茶色が映えている
寝入っているうちに
財産を持ち逃げされた苦い過去が
男にはあるのだろう
ホームレスの世界にも
ぼくらとは違う種類の
生きるためのおきてが
たしかにあるのだと気付かされたあの日
ああ もうこんな仕事いやだ
もう辞めてやる
すべて放り出して
生きていくだけならなんとかなるのではないか
そう思うたびにいつも
ぼくの脳裏に
あの光景が浮かんでくるのはなぜなのだろう
ぼくもまた自分自身を見えない場所に
手錠でつないで生きている
臆病者に
違いない