詩「あるときに」 | 新サスケと短歌と詩

新サスケと短歌と詩

短歌と詩を公開します。

同人詩誌「とらむぺっと」の第9号以降(第13号まで続いたようだ)には、僕は詩を寄せていない。

高校文芸部・年刊誌「白房(はくほう)」1967年版に載せてもらった、次の詩を紹介する。僕は16歳だった。


  あるときに

    新サスケ


ベルは鳴り止み 自動ドアは閉まり

十七時五十二分発〇〇行き普通列車は

窓の外のすでにおぼろな風景を

ゆっくりゆっくり後ろに去らせはじめる

蛍光灯に照らし出された

週刊誌片手のサラリーマン

こっくりこっくりふねをこぐおばさん

それに作業服のおっさんは

吊輪にぶらさがりながら眼を閉じている

このおりの中のあちこちに

まるで別の小さな世界をつくるかのように

女子学生たちはおしゃべりをつづけ

ときには笑いを爆発させる

窓の外の黒く流れてゆくかたまりのうえには

自分の顔がはかなくうかび いつしか

ぬけがらの私を見つめている

多くの疲れた人生と

いくつかの小さな花束を乗せて

薄闇の中を列車は運びつづける