こぐま星座「寂しいおばば」 | 新サスケと短歌と詩

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短歌と詩を公開します。

同人詩誌「螺旋」第59号(1993年10月・発行)より、次の作品を紹介する。


  寂しいおばば

    こぐま星座


移植ごてを片手に

白い犬にちゃって歩いてるおばば

犬にちゃって歩いてるんか

犬にちゃって歩かれてるんか

あっちゃこっちゃ行ったり来たりしている一匹と一人


移植ごては

あっちゃこっちゃでこいでまわる犬のあっぱを

拾うて歩く道具なんやな

手編みのセーターを着た

行儀悪い犬は

おばばの言うことなんか平気のへいざで

鎖をへっぱったり ほえたり

ブロック塀のかざをかいだり

ほうかと思うとタンポポの花のうえに

いきなりいずかって あっぱこいたりしている

ほのたびにおばばは

「あーあ」とか「えー」とか「なーに」とか

かけ声んてな相づちんてな声をあげている


なんかよう解らんけど

ほの 犬のしつけのなってえんとこ

ほの かけ声んてな声

かえって イカス感じやわ

おばば

娘も息子も都会へ出て

年寄りふたりだけの家で

おばばの白い犬は

きままほうずのねんねなんやな


モジリアニの絵から出てきたんてな

駐車場にいたおもっせぇ

寂しいおばば