詩「熟柿」 | 新サスケと短歌と詩

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短歌と詩を公開します。

同人詩誌「青魚(せいぎょ)」No.76より、次の作品を紹介する。


  熟柿

    新サスケ


青山さんに借りた詩集の

最後の六冊めを読み終えると

急に熟柿を食べたくなった

庭の木に残っているだろうか


今は亡き父がかつて

熟柿を紙箱に詰めて

新婚のわが家へ届けてくれた

何の意だったか


熟柿はこの世で一番おいしい

和食の刺身 洋食のグラタン

好みの料理よりも佳い


庭の柿の木に登って

最後の一個を食べた

甘くかすかに渋く冷たい