こぐま星座さんの詩集「なんなはん」より、「故郷」を転載する。
昨日に彼と会った時、この詩集のほとんどの作品を、このブログにアップする事に、異存はない様子だった。
故郷
こぐま星座
雨がやんだ朝の田んぼ道の
黄色っぽい雲のあわさいから
かあちゃんらがおりて来た
かあちゃんらは
みんなひとかたまりにちぇえだって
田植えが終わったばっかの田んぼ道を歩いてくる
「今日はちっとここで遊んでいこまいけの わははは」
生きているとき村でゆうめいやった
かあちゃんのあばさけたんてな笑い声が聞こえる
かあちゃんは赤いでこんぼをぶしている
「うわあ ここは惣兵衛はんとこの田んぼやな んまこ育つといいなあ」
「ほうやあ んまこ植えたるんじゃわな」
「ふうん あたるまいじゃあ」
今 へちこそうに「あたるまいじゃあ」っちゅうた子が
惣兵衛さんやなってぼおはわかった
かあちゃんらはめいめいがサーカスのこどもんてに
宙返りしたり側転したり逆立ちしたりくるくるまいしたりしながら
隣の村のほうへ流れていく
あぜのはたにいずかって泣きだした子がいる
うしろのほうにいた女の子たちが集まってなだめている
「めのめはいったんか」
「家かえりてえんか 田んぼ見ていたら家かえりとうなったんか」
「ほうかほうか ほんなら姉ちゃんがおんぶしたるで背中のんね」
「泣いたらあかんて 泣いたってじぇったいに帰られんのやで」
はなをたらしたまんま頭の後ろで両手を組んで
口をとがらせて男の子が言う
「しっ!だんねげのちええ子はわからんのやで」女の子が言う
ぴろ ぴろ ぴろ
ぴろ ぴろ ぴろ
先頭のほうでだれかがオルガンをひいている
いっせいに風がわたってきて
植えたばっかの田んぼの苗が
風のオルガンに合わせてプルプルなびいている