写真への興味が復活して知ったデジタル写真の面白さの一つは写真を加工できることです。
フィルム写真の時代にもある程度の「加工」はしていました。
最も写真に熱中していたころ、私は白黒写真は自分でフィルムを現像し、焼き付けもやっていました。
フィルム現像は、光に当たらないよう、布団の中に現像器とフィルムを入れ、手探りでフィルムを開けて現像タンクに巻きつける。
焼き付けは、当然のことながら、暗室はないので、作業はいつも夜。
雨戸を閉め切り、カーテンもして、完全に真っ暗な環境を作る。
作業に夢中になって夜が明けたことは何度もあります。
そんな時代の「加工」の一つは液の温度でした。
液の温度を下げると硬い感じの写真になります。
コントラストが強い、といったほうが分かりやすいですね。
あ、「現像」とか「焼き付け」って何?と思われる方もいらっしゃいますよね。
ちょっとだけ、ざっと説明しておきますね。
レンズを通して作られた像を、カメラに装填されたフィルムに当てることでフィルムにその像が写されます。
そのままではフィルムに写った像を見ることはできず、また、フィルムに光が当たるとその像は消えてしまいます。
そのため、その像をフィルムに定着させるために「現像」という処理をします。
具体的には、現像タンクに入れたフィルムを現像液に浸すことでフィルムに像を浮かび上がらせます。
そして、それ以降、光が当たっても変化しないようにフィルムを定着液に浸します。
これらの作業は真っ暗な中でやらなくてはなりません。
また、液の温度や液に浸す時間を管理する必要があります。
そうして像が定着したフィルムを乾燥させて、ネガフィルムが出来上がります。
続いて「焼き付け」。
焼き付け機の上部にフィルムをセットします。
そのフィルムの上から光を当てると、下にその像が映ります。
そこに印画紙を置きます。
フィルムと同じように、印画紙も光に反応して、そこに見えない像ができます。
光を当てすぎると真っ黒になってしまうため、ここでも光を当てる時間を管理しなくてはなりません。
そして、一定時間光を当てた印画紙を現像液に浸します。
そこで初めて印画紙の上に像が浮かび上がります。
そのままにしておくと、現像が進んで真っ黒になってしまうので、停止液に浸し、さらに像を定着させるために定着液に浸します。
一定時間経過後、水で液を完全に洗い流し、自然乾燥させて、ようやく完成。
フィルム現像はフィルムごとやりますが、焼き付けは基本的には写真1枚ごとに今の作業をやります。
さて、「前置き」が長くなりました。
本題の「加工」。
このような現像や焼き付けの中での加工の一つは、先ほど書いた液の温度調節による写真全体の調子の変化です。
硬い感じになったり、柔らかい感じになったりします。
これは1枚の写真全体に対する「加工」。
もう一つの加工は、1枚の写真の中で、部分によって光を当てる時間を変えるもの。
これは焼き付け時におこないます。
印画紙にフィルムの像を当てるときに、部分的に手で光を遮ることでそれ以外の部分との光の照射時間を変えます。
こうすることで、例えば、写真の真ん中部分が写り、その周囲がだんだん黒くなるといった写真が出来上がります。
ずいぶん手間がかかるでしょ。
「手で光を遮る」なんて、時代を感じさせますね。
それがデジタル写真だとさまざまな加工が、しかも、簡単にできますね。
私はまだ少ししか試していませんが、こんなことをやってみました。
この写真を白黒に。
そして、コントラストを極端に強くしてみました。
なかなか楽しいですね。