今年7月26日に起きた
神奈川県相模原市の障がい者施設での殺傷事件。
...被害者の名前は未だに公表されておらず、
それに対して賛否両論の意見が交わされています。
被害者家族の心情に配慮すべきだ。
今回の被害者だけが名前を公開されないのは
障がい者を区別するものだ。
等々。
一時はマスコミが大きく取り上げたこの事件も
だんだん忘れ去られようとしているのではないでしょうか。
あの事件が残したものは決して忘れてはなりません。
私は重度・最重度とされる知的障害を持つ方々の施設で
ボランティア活動をしています。
犯人は知的障がい者について「意思疎通ができない」と
言っているそうですが、決してそんなことはありません。
むしろ、喜怒哀楽、
そして、自分の欲求を素直に訴える、とても純粋な方々です。
それぞれの方々が生きてきた背景があり、
それぞれの行動に如実に表れています。
私が関わっている日中活動にいらっしゃる方の中に、
この春に高校を卒業したばかりの青年がいます。
私と顔を合わせるといつも「こんどうさ~ん」と
呼びかけてきます。
それに対して、私が返事をし、
今度は私がその方の名前を呼ぶと...恥ずかしそうに下を向いてしまいます。
暫くするとまた「こんどうさ~ん」が始まります。
しかし、その方は決して私に近付いては来ません。
この方をその日中活動から送り出す時も「一緒に帰ろ」と
声をかけると逃げるようにして走って行ってしまいます。
いつも女性職員と手をつないで帰ってゆきます。
この方は幼児期に父親から身体的虐待を受けており、
それが故に男性、特に私のようにこの方の父親に近い男性、
に対する警戒心がとても強いのだそうです。
ある時、ほんの数秒だけ、
私が押している他の方の車椅子の取っ手にこの方が
手を乗せたことがあります。
私は気づかない振りをしていましたが、
またすぐに走って行ってしまいました。
少しずつでも、この方の警戒心を解くお手伝いができたら、
と思いますが、週に1、2回顔を合わせるだけで
そんなことができるかどうか。
私は人の行動の背景には必ず何か理由があると思っています。
無意味な行動はない。
そして、それは障害の有無には関係がありません。
ただ、その表現の仕方が
健常者と少し異なっているかもしれません。
それを理解して差し上げることが、ボランティアとはいえ、
支援者の務めだと思っています。
社会全体がこのような方々の行動を理解するのは
難しいかもしれない。
しかし、少なくとも差別はしないで欲しい。
まして「生きている価値がない」などとは
思わないで欲しい。
それが私の願いです。
決して、この事件を忘れないでください。
今回の事件に対する思いを込めて
歩笑夢(poem)という音楽ユニットがお作りになった
「19の軌跡」という歌を是非お聴きください。
https://www.youtube.com/embed/gX4yurwPyX8