舞踏の諸相 ついに実現! | 平尾雅子 Masako Hirao のブログ

舞踏の諸相 ついに実現!

昨年の6月から延期された「舞踏の諸相」の演奏会が、おとといついに実現しました。

昨今の厳しい状況で、本当にどうなることかと気をもみ、猛暑、大雨など極端な天候不順もあって、最後の最後まで心配でしたが、なんとかみんな元気で無事に終了することができました。こんな日にご来場くださったお客さまには、本当に感謝しかありません。


ヴァイオリンの天野寿彦さんの企画はいつもコンセプトがしっかりしていてとても面白いのですが、今回は舞踏・パントマイムを入れた演奏会。ダンスの松本更紗さんや天野さんのアイデアに基づき、フルートの前田リリ子さん、辛川太一さん、私もみんなで意見を出し合って考えた演出で、普通の演奏会では見られない楽しいサプライズいっぱいの本番になりました。


冒頭は、ウォーミングアップをする踊り子が、突然誘われてガンバを渡され、私達とテレマンの四重奏を合奏するシーンから始まり、最後の楽章でガンバを置いてまた踊り出すという演出。ガンバ奏者でもある更紗さんならではのサプライズでした。

次のマレのマレジェンヌは、ヴァイオリンと通奏低音のための曲ですが、小オペラのような作りなので、それに彼女のパントマイムと踊りが付き、少女が舞踏会へのお誘いの手紙を受け取り、喜んで準備をする様が表現され…

次のクープランの組曲では、いよいよ舞踏会のシーン、バロックの宮廷ダンスが披露されました。


休憩後は、ラモの クラヴサン・コンセール第5番で始まりました。チェンバロ( クラヴサン)を弾いた辛川くんは、バーゼルに留学、一時帰国中の新進気鋭の逸材です。このラモでも次に演奏したデュフリの独奏でも、より一層上達した演奏で聴衆を魅了していました。


私にとっては、今回のラモが8弦ガンバのお披露目!そもそも8弦ガンバは本邦初演です。本番はかなり緊張しましたが、3月にこの楽器を試奏して以来、ついに演奏会で弾くことができ、とても幸せでした。

ラモは、8弦ガンバで弾くと、今まで7弦で弾いていて腑に落ちなかった箇所が全て解決します。無理やり課せられる超ハイポジションは、追加でされた1弦のg線で弾くと、ローポジションで鮮明な音で鳴らすことができ、和音もよく響くようになります。第2番のコンセールに至っては、7弦では不可能ないくつかの音が可能になり、ラモの意図に納得。でも、指使いが全然違うこと、駒が平らなので隣の弦に触らないようにするのが一苦労、そして何よりも1弦g線が細くて切れやすいのが難点です。今回は、2日前までは釣り糸の弦で練習し、本番でガットにしようと思ったのですが、張り替えようとしたら、立て続けに3本も切れてしまい、やむなく断念、釣り糸弦で本番となりました。ガットの方が音色も良く、音量もあるので、とても残念でしたが、本番で切れてしまっては元も子もありません。今後製作者と、ピッチや弦の太さ、テールピースの穴の形状など検討して、次回ラモを弾く時はガットでやりたいと思います。


演奏会の最後は、タイトルにもなっているルベルの「舞踏の諸相」。この曲は、沢山の短い舞曲が連なった組曲で、当時も踊られた記録がありますが、舞踏譜は残っていません。なので、多くの舞踏家が当時の他の舞踏譜を参考にしながら、オリジナルの舞踏を創作するのですが、今回の更紗さんの振り付けはとてもユニークで、コンテンポラリーの要素も取り入れ、彼女にしかできない踊り+パントマイムになっていました。彼女は体幹がしっかりした素晴らしいダンサーで感性も鋭く、とてもチャーミング。聴衆の目を惹きつけるオーラがあります。終曲のソナタで多いに盛り上がってコンサート終演となりました。


アンコールでは、また8弦ガンバを持ち出し、ラモの第3番からタンブーランを演奏しました。もちろん舞踏付きです。それが終わるや否や、チェンバロとガンバによるドローンが聞こえ、ヴァイオリンとフルートがクープランのミュゼットの調べを始めます。そこに道化の格好をした更紗さんが現れて、私と前田りり子さんを誘い舞台中央へ、3人でミュゼットを踊りました。練習した甲斐あって、お客さんもこのサプライズに笑顔!うまくいって良かった(^^)


色々とドキドキしたけど、とっても楽しい演奏会になりました!









     8月15日記