シンガポール考 | まさきせいの奇縁まんだらだら

まさきせいの奇縁まんだらだら

原因不明の「声が出ない症候群」に見舞われ、声の仕事ができない中で、人と出会い、本と出会い、言葉と出会い、不思議と出会い…

瀬戸内寂聴さんの『奇縁まんだら』というご本を真似て、私の「ご縁」を書いてみようと思います。

5月以来のご無沙汰です。ずっと新企画でつめていて、グルグルのギチギチになってました~
それを、10月12日、シンガポールで発表して、いよいよ本格始動です。
企画の紹介はあらためまして、まずは30年ぶりに訪れたシンガポールについて。
 
 
30年前、3ヶ月のイギリス語学研修へ、シンガポールエアで行って、帰りにヨーロッパをまわってパリ発にしたら、シンガポールに一泊する羽目に。
 
ホテルを空港の紹介所で探してもらった時、オーチャード(街の名前です)以外の選択肢は無し。当時は確かMRTが開通したばかりで日本には情報も無く、通りのあちこちにニセブランド売りが立ってました。なんでも安く、お得感満載!
 
MRTは、現在シンガポール中を縦横に走る、完全オートの無人電車。市街地では地下鉄で、郊外では地上を走る。大変わかりやすく、旅行者でも利用しやすい。日本の地下鉄より静かで、シートは硬いけど、乗り心地は悪くない。市街地区間でシンガポール$1.5(120円)、郊外でS$2.3(180円)くらい。(注:うろ覚え)
MRTプラットフォーム
 
30年前、柵の向こうのマーライオンを遠目に見て、植物園に行って、屋台村でサティを食べたのを覚えています。当時、屋台は不衛生ということで、国策で、新しく建ったビルの前庭?に集められていました。それが現在の屋台村(ホーカーセンター)の発祥だと思います。
 
現在、マーライオンも出世して、マーライオンパークで、観光客のすぐ前で水をはいています。
 
30年前、オーチャードの街の路上は、ディズニーランドのごとくきれいで、ゴミひとつ落ちていませんでした。
 
今回はチャイナタウンに泊まって、ダウンタウンの辺りをうろうろしてたので、ちょっと様子は違うと思うけど、路上は渋谷・新宿程度のゴミ度でした。でも、空気は悪くなかったし、水も良かった。髪がつやつやになりました。
 
チャイナタウンの一角(手前から、たぶんキリスト教会、ヒンドゥーのお寺、仏陀のお寺)
 
鳩、ホンモノで、笑った・・・(ヒンドゥーのお寺)
 
安全だけど、19時過ぎると、シティエリアは、車も人も極端に減って、心許なくなりました。東京みたいに、コンビニが至るところには無いし、店も食事関係以外は閉まってしまう。夜の移動は短距離でもMRTがいいようです。昼間は暑いし。私は一区間でも乗りました。
 
今回泊まったHOTEL81CHINATOWN
 
ホテルのお向かい
 
チャイナタウンは、食事処が多いので、夜でも比較的にぎやか。それでも東京に比べれば早く閉まってしまうのは、アルコールの提供が少ないからかな。税金が高く、ピザ系のバーで、ビール小瓶S$15(1200円!)。
 
よく飲んでるのは、白人系。日本もだけど、シンガポールも若い人ほど飲まないようになってきてる?
今、シンガポールと聞けば、「ビジネス先進国」というほどの発展をしていて、実際に行かなければ、30年前、自分が一瞬でも寄ったことがあるなんて、忘れたままだったかも。
 
短期間に発展しすぎた「ひずみ」が、あちこちに感じられました。
 
ホワイトカラーとブルーカラーの格差。数%のIT系?投資族と、取り残された90%以上の人々。
 
エリートや白人系が多いエリア 
うちのホテルからも歩いてスグの距離(お寺が並んでる所の斜め前の辺り)
 
 
30年前、私が会ったシンガポールの人々は、みんな明るく笑顔で、余裕があって、仕事も楽しそうだった。物価は安かったけど、人々の余裕からくるのか、とても豊かな印象だった。
 
今回、タクシーの運転手さんはみな、ぶっきらぼうで、それが、S$2(160円)のチップを渡しただけで、何度も頭を下げてサンキューを繰り返した。
 
食事処でも、笑顔はほとんど無かった。スタバでさえ、むっすりしていて、コーヒーは日本のスタバより好きだけど、モーニングセットS$6.5(520円)のパンケーキは微妙だった。Wi-Fiが使えるから入るけど、なかなかヒドイ。
 
ホーカーセンター(屋台村)でも、観光客は相手にしたくない、という風情で、現地のビジネス人たちに混じって並べば、うざったそうな顔を隠さない。私などチャレンジャーは、前の人を参考に、具の食材を自分で選んで作ってもらう麺類の店に並んだけど、前の人はスープを選べたのに、私は聞きもされなかった。まあ、おいしかったし、気持ちはわかるからいいんだけどね。
 
街の通りには、空き店舗も目立って、恐らく家賃が上がりすぎて、いられなくなったのだと思うし、今も物価がどんどん上がってるようで、近いうち、破綻が来るのは避けられないんじゃないだろうか。
 
ホテル代も高くて、日本の感覚で考えると、耐えられないかもしれない。一泊1万以上の部屋でバスルームに羽虫がわく。掃除も隅までは行き届かない。もちろん、冷蔵庫は無いし、バスタブも無し。トイレにシャワーがついている感じで、シャワーを使えば、便座は水浸し。
 
ベッドは清潔だし、エアコンもよく効くし、何よりWi-Fiが快適なので、サバイバーの私などは、まあいっか、でガマンできるけど、潔癖症や虫ダメの人にはキツイよね。これで一泊13000円。
 
これが、今のシンガポールの実体なんだと思った。
 
国全体をテーマパークのように開発して外国人観光客を呼び、さらに外資の力でホワイトカラーの世界を作り上げた国。我が物顔で国中を荒らす大量の外国人と、海外との取引に躍起で自国を顧みないホワイトカラー。
 
経済水準を、投資家やホワイトカラーのレベルに合わせたのか、物価は日本と変わらないか、高いくらい。フードコートや屋台村では安価に食事できるけど、それで日本の牛丼レベル。ものすごく、暮らしにくいんじゃないかと思う。
 
日本よりさらに国土も狭く、資源も少ない国で、近未来メガロポリスの悲哀をひしひしと感じ、悲しくなりました。
 
前に進みたい人は、進めばいい。だけど、それだけが最良ではないし、留まる自由、後戻りする自由だってあっていい。進まなきゃいけない、ばかりじゃない。
 
隣の人を見やることを忘れたら、いずれ自分も忘れられる。
 
ゆっくり。
 
リバーサファリ パンダのおしり(ガラスなくて生パンダ)
 
リバーサファリ 目が下についてるお魚(けっこうデカイ)
 
リバーサファリ やる気の無いワニ
 
 
日本もそう、もうそろそろ、ゆっくりでいいんじゃないか。
 
今回、シンガポールを見て、切実に思った。
 
戦後、先人ががんばってくれたおかげで、日本は素敵な国になった。日本だけ見てたら気付けないことも、外国に行ってみると、わかることがある。
 
人間の分をわきまえて、人間らしくいられれば、それでいいんじゃないかと思う。
 
私が今回発表した企画は、先進技術を使うけど、どちらかというと、後ろ向きの発想で、それは、前向きが好きな投資家たちには受けなかった(笑)
 
だけど、私自身も含めて、取り残され組だからこそ、必要としていることがある。
 
今の人たちが幸せでなくて、未来の人たちに幸せがあるだろうか?
 
次回は、その企画について書きます。
 
リバーサファリ ワニのしっぽ(上のとは別ワニ) デカイ!