ドラマ「聖者の行進」については第一話からブログで感想を書いています。


下記のブログです。

聖者の行進 1話~3話を観て

聖者の行進 4話~6話を観て

聖者の行進 7話~9話を観て


そして残りの10~11話は裁判がメインです。
今まで竹上製作所が、知的障害者の人たちに悪事をしてきた事への公判部分です。
今回は、ドラマの内容については割愛します。


何度か書いているように、この聖者の行進は茨城県水戸市にある、段ボール加工会社で起きた知的障害者に対する暴行・強姦事件を基に制作されたドラマです。


水戸事件についてはこちらで説明があります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E6%88%B8%E4%BA%8B%E4%BB%B6


今回の中で、あるセリフが本質を物語っていると感じました。それが・・・

「僕たちが本当のことを言っても全部うそになっちゃうのはなぜですか」

これは公判中に証言に立った、知的障害者の永遠(トワ)が叫んだ言葉です。


実際に水戸事件の公判でも、知的障害者が証言した内容に関しては、被害を受けた日時や状況を正確に証言出来る被害者が少ないことで、証拠として扱われずに不起訴となっています。

社長は特定求職者雇用開発助成金の受給に関する詐欺罪と、それ以外の暴行2件、そして傷害1件で起訴されたのみ、知的障害者の女性に対する暴行・強姦事件はすべて不起訴となりました。


今から15年前は、知的障害者に対しての人権や証言は、残念ながらこのように殆ど認められていませんでした。

ただこの判決が発端となり、判決に不服を抱いた知的障害者を支援する人たちが、器物損壊罪で現行犯逮捕されたり、監禁容疑で逮捕されたりと数々の逮捕者が出たことで問題意識が大きくなっていきました。

そしてこの問題が社会的にクローズアップされることになり、マスコミで大きく報道されていきました。
その事により、世論がこの知的障害者の人権を考え、被害意識を重んじるようになりました。


その後、これがキッカケで、数年後に行われた民事訴訟では、水戸地方裁判所は原告の訴えを全面的に認め、損害賠償が確定され、被告側の社長は1500万円の賠償金を支払うよう命じました。

刑事事件では不起訴となった性的虐待について、民事ではその過失を認めたこととなりました。
これが今から7年前のことになります。


この事件に関する詳細は「水戸事件のたたかいを支える会」のホームページでも紹介されています。
http://www.iris.dti.ne.jp/~globe/


「僕たちが本当のことを言っても全部うそになっちゃうのはなぜですか」


この言葉を水戸事件の裁判中に言ったかどうかは分かりません。
ただこのドラマの確信でもあり本質でもある部分。

知的障害者の人たちの証言が認められなかった刑事訴訟。しかし、民事ではその内容が認められたということになります。

知的障害者に対する人権は、この長い期間行われていた、水戸事件の中で少しずつ変化が起きた事実です。

この段ボール加工会社に勤められていた知的障害者の方々の精神的に受けたその痛手と、その苦しみは語りがたいものも多数あったと思います。
しかし結果的に、この方々の正義なる闘いがあったからこそ、今の知的障害者の雇用に関する優遇制度や待遇が改善されていったのではないかと個人的に感じております。


また我が子が障害児として認知してから改めて観なおした「聖者の行進」。
このドラマの奥底にある部分を感じながら、また色々と考えさせられながら観ることが出来たドラマでした。


ペタしてね