万葉集から


天平五年の春、笠朝臣金村が入唐使に贈る歌の反歌、二首



波の上ゆ 見ゆる小島の 雲隠り

あな息づかし 相別れなば


なみのうへゆ みゆるこじまの くもかくり

あないきづかし あひわかれなば


波の上から見る小島は雲に隠れ、ため息が出る別れに


別の詠みをすれば


「なみのうへゆ」は「波の上ゆ」

「みゆるこじまの」は「身揺る越し今の」

「くもかくり」は「苦も搔く、理」

「あないきづかし」は「あな息づかし」

「あひわかれなば」は「相彼涸れなば」


歌の冠は「なみくああ」から

「波苦嗚呼」や「汝身苦嗚呼」と

船酔いに苦しむ



たまきはる 命に向ひ 恋ひむゆは

君がみ船の 楫柄にもが


たまきはる いのちにむかひ こひむゆは

きみがみふねの かぢからにもが


霊魂が極まる命に向い恋するのは君の船の楫の柄の様なもの


別の詠みをすれば


「たまきはる」は「魂極る」

「いのちにむかひ」は「異の地に向ひ」

「こひむゆは」は「来ひむゆは」

「きみがみふねの」は「君が見船の」

「かぢからにもが」は「か力にもが」


命懸けで、異国の地に向い行くのは、君が見ている船の力だ