万葉集から


井を詠む



落ち激つ 走井水の 清くあれば

措きてはわれは 去きてかてぬかも


おちたぎつ はしりゐみづの きよくあれば

おきてはわれは ゆきてかてぬかも


激しく落ちる走井の水は清らかで、此処を去るのが惜しい


別の詠みをすれば


「ゐ」を「井」ではなく、「猪」と解釈すれば


「おちたぎつ」は「落ち激つ」

「はしりゐみづの」は「走り猪満つの」

「きよくあれば」は「気良くあれば」

「おきてはわれは」は「惜きては彼は」

「ゆきてかてぬかも」は「去きてかてぬかも」


湧き水の池で、猪が楽しんでいる



馬酔木なす 栄えし君の 掘りし井の

石井の水は 飲めど飽かぬかも


あしびなす さかえしきみの ほりしゐの

いはゐのみづは のめどあかぬかも


馬酔木の様に栄えた君が掘った井戸の石井の水は、飲んでも飽きない


別の詠みをすれば


やはり、三句の「ゐ」を「井」ではなく「猪」と解釈すれば


「あしびなす」は「悪し日なす」

「さかえしきみの」は「栄えし君の」

「ほりしゐの」は「欲りし猪の」

「いはゐのみづは」は「石井の水は」

「のめどあかぬかも」は「飲めど飽かぬかも」



「井」は「い」でも「猪」を詠んだ