万葉集から


広河女王の歌、二首



一首


恋草を 力車に 七車

積みて恋ふらく わが心から


こひくさを ちからくるまに ななくるま

つみてこふらく わがこころから


恋草を力車で七車積み、恋をする、心から


別の詠みをすれば


「こひくさを」は「乞ひ草を」

「ちからくるまに」は「地から繰る間に」

「ななくるま」は「七繰る今」

「つみてこふらく」は「摘みて此振らく」

「わがこころから」は「若子頃から」


七草摘み



二首


恋は今は あらじとわれは 思ひしを

何処の恋そ 掴みかかれる


こひはいまは あらじとわれは おもひしを

いづくのこひそ つかみかかれる


恋は今はないと思う、何処の恋に掴みかかられる


別の詠みをすれば


「恋は今は」、恋は、今は

「あらじと我は」、あらじと我は

「思ひしを」、思う

「何時来の恋そ」、何時くるのか恋は

との掛詞で、

「居付くの子、秀ぞ」、子がすり寄ってくる

「掴み掛かれる」、掴み掛かられる


まだ小さい子の行く末の恋を考えたり、子と遊んで育てている



初めの歌の七草は、これで、七草粥を作り、子の無病息災を祈ってのことだろう