万葉集の歌から


高市連黒人の歌、二首



一首目


吾妹子に 猪名野は見せつ 名次山

角の松原 いつか示さむ


わぎもこに ゐなのはみせつ なつぎやま

つののまつばら いつかしめさむ


君に猪名野を見せた、名次山、角の松原をいつか見せたい


別の詠みをすれば


固有名詞の

「猪名野(ゐなの)」は、「居汝の」

「名次山(なつぎやま)」は「汝突くや今」

「角の松原(つののまつばら)」は、「角の待つ払」

と、男女の行為をし

「吾妹子には見せつ、出づか示さむ」

となる


さて、男女の行為をしたならば、子が生まれることになる



二首目


去来児等 倭部早 白菅乃

真野乃榛原 手折而将帰


これまでの訓読み


いざ児ども 大和へ早く 白菅の

真野の榛原 手折りて行かむ


一句と二句がとても似ている歌がある


去来子等 早日本邊 大伴乃 御津乃濱松 待戀奴良武


やはり、これまでの訓読みは


いざ子ども 早く日本へ 大伴の

御津の浜松 待ち恋ひぬらむ


一句を「さりくこら」と、訓読みした


「去来子等」の「去来」は「さりく」で、二語で、「来る」の意味となる

万葉集の巻一の一六では、「春去来者」を「春去り来れば」と和訳している

「子等」は「こら」で、多くの人を親しんで呼ぶ言葉


同じように


さりく子ら 大和へ早く 白菅の

真野の榛原 手折りて行かむ


さりく子ら やまとへはやく しらすげの

まののはりはら たをりてゆかむ


さあ皆で大和へ早く、白菅の真野の榛原の木の枝を折って行く


別の詠みをすれば


「さりくこら」は「去り来子ら」と、出て来る子

「やまとへはやく」は「や窓へ早く」

「しらすげの」は「知らすげの」

「まののはりはら」は「真のの張り腹」と、

「たをりてゆかむ」は「手折りて行かむ」と、指折り数える


子が早く生まれてホシイ、何時生まれるのか、指折り数えている



黒人の妻の答へる歌


白菅の 真野の榛原 往くさ来さ

君こそ見らめ 真野の榛原


しらすげの まののはりはら ゆくさくさ

きみこそみらめ まののはりはら


白菅の真野の榛原を行き来し君こそ見て、真野の榛原


別の詠みをすれば


「しらすげの」は「知らずげの」

「まののはりはら」は「まのの張り腹」

「ゆくさくさ」は「往くさ来さ」

「きみこそみらめ」は「君こそ見らめ」

「まののはりはら」は「真のの張り腹」


生まれそうで生まれない

君に早く見てほしい


二人は、子がうまれそうなので、やきもきしている