万葉集の歌から


柿本人麻呂が妻の依羅娘子へ


長歌に添えた反歌


石見のや 高角山の 木の際より

わが振る袖を 妹が見つらむか


いはみのや たかつのやまの このまより

わがふるそでを いもみつらむか


石見の高角山の木の間から私が振る袖を君は見ているだろうか


別の詠みをすれば


「いはみのや」は、「い嵌みの矢」

「たかつのやまの」は、「誰が角や間の」

「このまより」は、「此の間寄り」

「わがふるそでを」は、「我が振る其出を」

「いもみつらむか」は、「猪も見つらむか」


猪狩りのこと



もう一首の反歌


小竹の葉は み山もさやに 乱げども

われは妹思ふ 別れ来ぬれば


ささのはは みやまもさやに さやげども

われはいもおもふ わかれきぬれば


笹の葉はみ山にさやと騒いでいるが、私は残してきた君を思う


別の詠みをすれば


「ささのはは」は、「笹の葉葉」

「みやまもさやに」は、「見や間もさやに」

「さやげども」は、「さやけども」

「われはいもおもふ」は、「割れは猪も思ふ」

「わかれきぬれば」は、「我彼来ぬれば」


こちらも、笹の原の間から猪が現れたことを詠んでいる


「いはみ(石見)」は「猪食み」だから、猪



さらに、また反歌


青駒の 足掻を早み 雲居にそ

妹があたりを 過ぎて来にける


あをこまの あがきをはやみ くもゐにそ

いもがあたりを すぎてきにける


青い馬は足が速く遠く君の家の辺りを過ぎ来る


別の詠みをすれば


「あをこまの」は、「青子まの」

「あがきをはやみ」は、「足掻きを早み」

「くもゐにそ」は、「来も射にそ」

「いもがあたりを」は、「猪もが辺りを」

「すぎてきにける」は、「過ぎてき、逃げる」


猪の子が現れたのを矢を射たが、外れて逃げられた


またまと反歌


秋山に 落つる黄葉 しましくは

な散り乱ひそ 妹があたり見む


あきやまに おつるもみぢば しましくは

なちりまがひそ いもがあたりみむ


秋の山に落ちる黄葉しばらくは散らないで、君が住む辺りを見る


別の詠みをすれば


「あきやまに」は、「秋山に」

「おつるもみぢば」は、「落つる黄葉」

「しましくは」は、「縞敷く」

「なちりまがひそ」は、「汝、散り紛ひそ」

「いもがあたりみむ」は、「猪が辺り見む」


複数の猪が散り紛れていった



妻の依羅娘子が柿本人麻呂に詠んだ歌


な思ひと 君は言へども 逢はむ時

何時と知りて わが恋ひざらむ


なおもひと きみはいへども あはむとき

いつとしりてか わがこひざらむ


思い慕うなと君は言うけれど、逢える時が何時かとしっているからか、思い慕わずにいられるだろうか


別の詠みをすれば


「なおもひと」は、「なおも人」

「きみはいへども」は、「君は猪へども」

「あはむとき」は、「遭はむ時」

「いつとしりてか」は、「出づと知りてか」

「わがこひざらむ」は、「和歌乞ひざらめ」


柿本人麻呂の反歌が猪のことを詠むが、猪が出ると知って和歌を詠んでいるのか