万葉集の歌から


明日香皇女の城上の殯宮に柿本人麻呂が詠んだ歌


明日香川 しがらみ渡し 塞かませば

流るる水も のどにかあらまし


あすかかは しがらみわたし せかませば

ながるるみづも のどにかあらまし


明日香川に、柵を渡して、堰き止めれば、流れる水は、緩やかになるだろうに


別の詠みをすれば


「あすかかは」は、「あす嬶は」と、明日には私の妻も

「しがらみわたし」は、「柵渡し」と、柵を作り

「せかませば」は、「塞かませば」と、囲い込めば

「ながるるみづも」は、「流れる水も」と、流れる涙も

「のどにかあらまし」は、「長閑かあらまし」と、緩やかになる


殯宮を行えば、涙も少しは収まるだろう


五句が少し異なる歌もあるが、大意は変わらない


明日香川 しがらみ渡し 塞かませば

流るる水の よどにかあらまし


あすかかは しがらみわたし せかませば

ながるるみづの よどにかあらまし



もう一首


明日香川 明日だに見むと 思へやも

わご大君の 御名忘れせぬ


あすかかは あすだにみむと おもへやも

わごおほきみの みなわすれせぬ


明日香川を明日には見ると思うが、我が君の名を忘れない


別の詠みをすれば


「あすかかは」は、「吾、す書か葉」

「あすだにみむと」は、「彼為だに見むと」

「おもへやも」は、「尾も上やも」

「わごおほきみの」は、尾を上にするから、「のみきほおごわ」とし、「飲み酒秀痴我」と、酒で飲み騒いでいる

「みなわすれせぬ」は、「見、汝忘れせぬ」と、忘れないだろう


殯の会を忘れない



この歌にも、少し違う言葉のものがあるが、大意は変わらない


明日香川 明日さへ見むと 思へかも

わご大君の 御名忘らえぬ


あすかかは あすさへみむと おもへかも

わごおほきみの みなわすらえぬ