万葉集の歌から



三諸の 神の神杉 夢のみに

見えつつともに 寝ねぬ夜ぞ多き


みもろの かみのかむすぎ いめにのみ

みえつつともに いねぬよぞおほき


三諸の神の神杉、夢に見つつ寝ることのない夜が多い


従来は、主語に付く言葉として「の」だが、「ゆく(行く)」の意味がある


みもろゆく かみのかむすぎ いめにのみ

みえつつともに いねぬよぞおほき


別の詠みをすれば


「みもろゆく」は、「み諸湯消」と、諸々の薬が届く

「かみのかむすぎ」は、「噛みの噛む過ぎ」と、薬を飲み続けた

「いめにのみ」は、「夢に飲み」と、夢にまで飲み

「みえつつともに」は、「実得づ、つと喪に」と、薬が効かず急に死んだ

「いねぬよぞおほき」は、「去ねぬよぞ、御祝く」と、死んでしまい神に祈る


この内容は、日本書紀に「十市皇女、卒然に病発して、宮中に死せぬ」と書かれているものと一致する


十市皇女は、突然に発病して死したことから、死因について、自殺や暗殺などが疑われてもいるが、薬の飲み過ぎがあったようだ

当時の薬は、体には毒となる物が使われていたりするので、何らかの中毒を引き起こした可能性がある



もう一首


神山の 山辺真麻木綿 短木綿

かくのみ故に 長くと思ひき


かむやまの やまべまそゆふ みぢかゆふ

かくのみからに ながくとおもひき


神山(三諸山)の山辺の麻幣の木綿が短い木綿であるのに幣であるように、長くと思っていた


別の詠みをすれば


「かむやまの」は、「噛むや間の」と、

「やまべまそゆふ」は、「山辺真朱ゆふ」と、山部の

「みぢかゆふ」は、「実ち粥ふ」と、実の入ったお粥

「かくのみからに」は、「香の実からに」と、橘の果実を食し

「ながくとおもひき」は、「長くと思ひきに」と、長く生きると思ったのに


これから、神山の真朱、粥、橘の果実を薬として、食べ続けていたことが分かる


「まそ」は、「真朱、真緒」のこと、他に、「丹粟、丹砂、赤丹、辰砂、光明朱」など、色々の名があるが、不老長寿の薬として間違って信じられていた

しかし、これらは硫化水銀や鉛化合物を含む毒である


薬として毒を服用していたのだから、急死するはずだ


「かくのみ」は「香の実、菓の実」で、橘の果実

「非時の香の実(ときじくのかくのみ)」が日本書紀の垂仁紀にある

「非時(ひじ)」は、会葬者に出す食事の意味がある



さらにもう一首


山振の 立ち儀ひたる 山清水

酌みに行かめど 道の知らなく


やまぶきの たちよそひたる やましみづ

くみにいかめど みちのしらなくに


山吹が美しい花で装う山の清水を汲みに行くが道が分からない


別の詠みをすれば


「やまぶきの」は、「山葺きの」と、山のような飾りの

「たちよそひたる」は、「太刀装ひ足る」と、太刀も添え

「やましみづ」は、「疾し見づ」と、満足できずに

「くみにいかめど」は、「組みに行かめど」と、装いを組み直しに行くが

「みちのしらなくに」は、「満の痴ら泣くに」と、泣き叫んてしまう


葬儀の時の十市皇女の設えに満足できずに泣き崩れたのだ