万葉集の歌から



嗚呼見の浦に 船乗りすらむ 乙女らが

珠裳の裾に 潮満つらむか


あみのうらに ふねのりすらむ をとめらが

たまものすそに しほみつらむか


嗚呼見の浦で船に乗っている乙女らが美しい衣の裾に潮が満ちている


別の詠みをすれば


「あみのうらに」は、「彼見の裏に」と、船乗りが見て判断する裏には、

「ふねのりすらむ」は、「船法すらむ」と、船の掟で

「をとめらが」は、「小止めらが」と、船を少し止め

「たまものすそに」は、「た今物す、其に」と、今行く、それは

「しほみつらむか」は、「潮見つらむか」と、潮を見ているからか


この歌は、船乗りが船を出すときの作法が詠まれている



もう一首


くしろ着く 手節の崎に 今日もかも

大宮人の 玉藻刈るらむ


くしろつく たふしのさきに けふもかも

おほみやひとの たまもかるらむ


釧を付ける腕のような手節の岬に、今日も大宮人は玉藻を刈っているだろうか


「釧(くしろ)」は、腕輪

「手節(てふし)」は、腕前、腕っ節

「大宮人(おほみやびと)」は、宮廷の役人


別の詠みをすれば


「くしろつく」は、「奇しろ突く」

「たふしのさきに」は、「伏しの割きに」

「けふもかも」は、「消ふもかも」

「おほみやひとの」は、「大海や、人の」

「たまもかるらむ」は、「霊も離るらむ」


追突事故が起き、船が転覆し、人が死んだのだ



さらにもう一首


潮騒に 伊良虞の島辺 漕ぐ船に

妹乗るらむか 荒き島廻を


しほさゐに いらこのしまへ こぐふねに

いものるらむか あらきしまみを


潮騒に伊良虞の島の辺りを漕ぐ船に君は乗っているか、荒々しい島の廻りを


別の詠みをすれば


「しほさゐに」は、「潮さ異に」と、

「いらこのしまへ」は、「伊良虞の島へ」と、

「こぐふねに」は、「国府根に」と、虞の国府のもとに

「いものるらむか」は、「異も乗るらむか」と、

「あらきしまみを」は、「荒らき島廻を」と、


伊良虞の国府に、異常な高潮が来たことを詠んでいる