万葉集の歌から



荒栲の 藤江の浦に 鱸釣る

白水郎とか見らむ 旅行くわれを


あらたへの ふぢえのうらに すずきつる

あまとかみらむ たびゆくわれを


粗末な織物のような藤江の浦で鱸を釣る漁師に見られるのか旅行く私を


別の詠みをすれば


「あらたへの」は、「有ら耐への」と、まだ生きている

「ふぢえのうらに」は、「生血得の裏に」と、締めの血抜きをする

「すずきつる」は、「濯きつる」と、濯ぐ

「あまとかみらむ」は、「甘と噛みらむ」と、噛めば甘い味がする

「たびゆくわれを」は、「度ゆく我を」と、何度も食べたくなる


鱸は、締めることと、余分な脂肪を落とすための濯ぎが美味しく食べるこつだと詠んでいる



もう一首


鱸取る 海人の燈火 外にだに

見ぬ人ゆゑに 恋ふるこのごろ


すずきとる あまのともしび よそにだに

みぬひとゆゑに こふるこのごろ


鱸釣る漁師の漁火が他所を見ないように、恋するこの頃


別の詠みをすれば


「すずきとる」は、「濯ぎ取る」と、濯ぐと

「あまのともしび」は、「甘の点しび」と、甘くなり

「よそにだに」は、「他所にだに」と、他には

「みぬひとゆゑに」は、「見ぬ一故に」と、見られない故に

「こふるこのごろ」は、「恋ふるこの頃」と、欲しくなるこの頃


鱸は、さっと水で



濯いだだけで美味しいのだから、「すすぐ(濯ぐ)」から「すずき(鱸)」になったのではないか