万葉集の歌から



寺寺の 女餓鬼申さく 大神の

男餓鬼賜りて その種子播かむ


てらてらの めがきもうさく おほみわの

をがきたまりて そのたねまかむ


寺々の女餓鬼が言うことには「大神の男餓鬼を頂きその種子を播きましょう」


別の詠みをすれば


「てらてらの」は、「照ら照らの」と、美しく輝く

「めがきもうさく」は、「女が木喪得避き」と、雌木が避けられ

「おほみわの」は、「大実葉の」と、大きな実と葉の

「をがきたまりて」は、「男が木溜まりて」と、雄木が増える

「そのたねまかむ」は、「その種播かむ」と、種を播く


寺には、実の成らない雄の銀杏が植えられてゆく

その実が臭いからだろう



報へる歌は


仏造る 真朱足らずは 水たまる

池田の朝臣が 鼻の上を掘れ


ほとけつくる まそほたらずは みづたまる

いけだのあそが はなのへをほれ


仏像を造るのに真朱が足りないなら水が溜まっている池田朝臣の鼻の上を掘れ


別の詠みをすれば


「ほとけつくる」は、「解け作る」と、

「まそほたらずは」は、「まそほ垂らす」と、水を垂らす

「みづたまる」は、「水溜まる」と、水に漬ける

「いけだのあそが」は、「池だの彼削が」と、水に漬けたまま削ぐ

「はなのへをほれ」は、「離の辺を掘れ」と、実を拾う


先の銀杏の木の歌の返しだから、

銀杏の実の種子の取り方を詠んでいる