万葉集の歌から



黄葉の にほひは繁し 然れども

妻梨の木を 手折り挿頭さむ


もみぢばの にほひはしげし しかれども

つまなしのきを たをりかざさむ


黄葉が彩り繁るけれども、妻がいない私は梨の木を折り頭に飾る


別の詠みをすれば


「もみぢばの」は、「喪、身血羽の」

「にほひはしげし」は、「丹火傍羽繁し」

「しかれども」は、「然れども」

「つまなしのきを」は、「付間無し、退きの」

「たをりかざさむ」は、「手居り蚊刺さむ」



もう一首


露霜の 寒き夕の 秋風に

黄葉にけらし 妻梨の木は


つゆしもの さむきゆふべの あきかぜに

もみぢにけらし つまなしのきは


露や霜の振る寒い夕方の秋風に黄葉となった妻梨の木


別の詠みをすれば


「つゆしもの」は、「付結し物」

「さむきゆふべの」は、「さ向き結ふ辺の」

「あきかぜに」は、「空きが背に」

「もみぢにけらし」は、「喪、身血に食らし」

「つまなしのきは」は、「付間無し、退きは」


この二つの歌に共通する

「もみぢ(黄葉)」は「喪身血」で、体の血に災いするもの

「つまにし(妻梨)」は「付間無し」で、間を開けずに頻繁に付くもの

と考えれば、ともに、蚊に血を吸われることを詠んだものではないか