万葉集の歌から


蘆垣の 中の和草 にこやかに(にこよかに)

我と笑まして 人に知らゆな


あしがきの なかのにこくさ にこやかに

われとゑまして ひとにしらゆな


蘆垣の中の和草はにこやかに、私に笑い人に知られぬな


別の詠みをすれば


「あしがきの」は、「悪し柿の」と、渋柿の

「なかのにこくさ」は、「中の丹小種」と、中の赤味の種

「にこやかに」は、「荷肥やかに」と、ふっくらと

「われとゑまして」は、「割れと得まして」と、割り得て

「ひとにしらゆな」は、「一煮白湯な」と、湯で煮る


渋柿の種の食べ方を詠んでいる



もう一首


あしがりの 箱根の嶺ろの 和草の

花つ妻なれや 紐解かず寝む


あしがりの はこねのねろの にこくさの

はなつつまなれや ひもとかずねむ


足柄の箱根の嶺の和草のような花妻ならば紐を解かずに寝る


別の詠みをすれば


「あしがりの」は、「足柄の」と、足柄の

「はこねのねろの」は、「箱根の根ろの」と、箱根の麓の

「にこくさの」は、「濁臭の」

「はなつつまなれや」は、「放包まなれや」と、放つガスに包まれたなら

「ひもとかずねむ」は、「日も解かず寝む」と、直ぐに寝込む


この歌は、箱根の火山性ガスの危険性を詠んでいる



さらにもう一首


射ゆ鹿を つなぐ川辺の 和草の

身の若かへに さ寝し児らはも


いゆしかを つなぐかはべの にこくさの

みのわかかへに さねしこらはも


射た鹿を繋いだ川辺の和草のような身の若さに寝た子らよ


別の詠みをすれば


「いゆしかを」は、「い揺し処を」と、揺れた処

「つなぐかはべの」は、「出泣くか這べの」と、出て泣き這う

「にこくさの」は、「逃ご屈さの」と、逃げ気が滅入る

「みのわかかへに」は、「見の我母辺に」と、母を見に

「さねしこらはも」は、「さ寝し児らはも」と、寝ている子どもたちよ


地震が起き、母や子の処に急いだ



さらにさらにもう一首


秋風に 靡く川辺の 和草の

にこよかにしも 思ほゆるかも


あきかぜに なびくかはべの にこくさの

にこよかにしも おもほゆるかも


秋風に靡く川辺の和草のようににこやかに思えるかも


別の詠みをすれば


「あきかぜに」は、「秋風に」

「なびくかはびの」は、「靡く皮火の」と靡く肌の火が

「にこくさの」は、「濁苦さの」と、苦しい

「にこよかにしも」は、「逃ご良かにしも」と、逃げたのだが

「おもほゆるかも」は、「面火ゆるかも」と、顔の火が痛む


秋の強い風に、顔の飛び火が火照ることを詠んでいる



「和草」の使い方は、色々