「弓絃葉(ゆづるは)」は、今の「譲り葉(ゆずりは)」で、新しい葉の芽が出ると前年の古い葉が落ち入れ替わるから、縁起木とされる

また、「弓絃(ゆづる)」は、弓の絃のことだが、葉の主脈が、弓絃に見えることに由来する



万葉集の歌から


いにしへに 恋ふる鳥かも 弓絃葉の

御井の上より 鳴き渡り行く


いにしへに こふるとりかも ゆづるはの

みいのうへより なきわたりゆく


昔を偲ぶ鳥かも、ゆずり葉の御井の上を鳴き渡り行く


別の詠みをすれば、


「いにしへに」は、「居にし辺に」と、居た辺りに

「こふるとりかも」は、「子振る取りかも」と、子が入れ替わり

「ゆづるはの」は、「譲る葉の」と、譲る葉の

「みいのうへより」は、「見出の上より」と、見えて出てくる辺りより

「なきわたりゆく」は、「汝来葉足りゆく」と、生えた葉が満ちてゆく


「ゆずり葉」の名前の通りに、葉の生え替わりを詠んでいる


沓冠は

「いにしへに」

「こふるとりかも」

「ゆづるはの」

「みいのうへより」

「なきわたりゆく」

から

「くりのもにいこゆみな」

「繰りの裳に生ゆ身、汝」

譲る葉を衣裳に見立てている



もう一首


何ど思へか 阿自久麻山の 弓絃葉の

含まる時に 風吹かずかも


あどもへか あじくまやまの ゆづるはの

ふふまるときに かぜふかずかも


何を思ってか、阿自久麻山の譲り葉が芽を出す時に風が吹かないことはない


別の詠みをすれば、


「あどもへか」は、「後萌処」で、後に芽吹く処

「あじくまやまの」は、「彼頻く間病まの」で、次から次へと病み

「ゆづるはの」は、「譲る葉の」

「ふふまるときに」は、「経生まる時に」で、生まれ時を経ると

「かぜふかずかも」は、「彼為更かずとも」で、季節が深まらずとも


譲り葉の次から次に病む処に芽吹く、季節が深まる秋ではなく、芽吹き生まれる時に


落葉する時は、秋ではなく芽吹く時だと詠んでいる


沓冠は

「あどもへか」

「あじくまやまの」

「ゆづるはの」

「ふふまるときに」

「かぜふかずかも」

から

「かふゆああ」

「交ふ由、嗚呼ああ」

と解釈し、

葉が入れ替わることを表している