「尾花」は、穂が獣の尻尾に似ているから、尻尾に見立てた名前で「尾花」、実際に獣がいるわけではないが、風にそよぐ様が手招きにも見立てられる「枯れ尾花(かれをばな)」

秋の七草の一つの「尾花」は、「芒、薄(すすき)」とも言い、「茅、萱(かや)」の一種


万葉集の歌から


陸奥の 真野の草原 遠けども

面影にして 見ゆといふものを


みちのくの まののかやはら とほけども

おもかげにして みゆといふものを


歌の意味は、

陸奥の真野の萱原は遠いけど、面影の中に見えるという

となる


茅は湿地に生える

だから、

地形や川が運ぶ土石によって生息状況が変わる


歌は、掛詞で詠めば、


満ち退くの 真野の萱原 訪ほけども

面影にして 見ゆといふものを


つまり

満ちたり引いたりとする真野の萱原を訪ねたが、今は見る影もなく見える言うものになってしまった

となる


陸地化が進んでしまったのだろう


もう一つ、万葉集から


初尾花 花に見むとし 天の川

へなりにけらし 年の緒長く


はつをばな はなにみむとし あまのかは

へなりにけらし としのをながく


歌の意味は

初めての尾花の花を見ようとして、天の川は隔てているらしい、長い年月をずっと

となる


さて、この歌は、「尾花」にちなみ、細長いもの尽くし


「尾花」は、獣の尻尾に似ているからの命名で、尻尾は細長いもの


「花に見むとし」は、尾花の穂のことで、やはり、細長いもの


「天の川」は、夜空に長く流れる川で、細長いもの


「へなり」の「へ」は、「辺」で、「ほとり」川のほとりは細長いもの、海なら海岸で、やはり細長いもの


「年の緒」は、年が長く続くのを緒(紐)に喩えたもので、永遠に続く


歌の最後は、「長く」と、秋の夜長の月をみる〆括る