春の七草は

芹なずな 御形はこべら 仏の座

すずなすずしろ これぞ七草

と古歌にも詠まれている御形



春の七草の一つの「御形(ごぎょう、おぎょう)」は、別名、「母子草(ははこくさ)」

七草の一つとして食用とされる


「御形」という名称は、厄除けのために御形と呼ばれる人形を川に流した雛祭りの風習が関係していると考えられている

当時は、蓬の代わりに御形を用いて草餅を作り、「母子餅」と呼び、母子の人形に母子餅を供えた


また

幼苗を「這う子(はうこ)」に見立てたから「母子(ははこ)」になったという説がある


平安時代には、「母子」や「母子草」と記されている


「人形」、「這う子」、「母子」

何れにしても、人、それも子の形に関係している


雛祭りの流し雛を作るなら、今では、紙や木を使用したりする


呪いをする時の人形は、藁で作られるように、細長い茎が人形を作りやすい


「御形」は、春に茎を伸ばして、40センチメートルほどにもなる

だから、

紙がない時代には、

人形を作るのに適した材料なのだったのだろう



「芹(せり)」は、

「瀬り」で、水を必要とするから、芹が浅瀬に生育することからだろう



「薺(なずな)」は、

「ぺんぺん草」や「三味線草」という別名があるが、これは、花の下ち付いている果実が三味線の撥(ばち)の形に似ていることに由来する

ぺんぺんは、三味線を弾く時の音の擬音

生命力が強く、特に、冬の時期でも採れ、汁に欠かせない具材だったから、「為す菜(なすな)」なのだろう



「はこべら」は、もともとは、「はくべら」と呼ばれていた

特徴は、茎に無数の小さな葉が付いていること

だから

「はくべら」は、「佩く(はく)へら(葉)」で、葉を帯びているという意味だろう



「仏の座(ほとけのざ)」は、

仏様が座る蓮華座(れんげざ)の意味で、葉の付き方などが、台座に似ているから

なお、

「三界草(さんがいそう)」という別名もあり、「仏の座」の層状の節が、欲界、色界、無欲界とお仏教の三界の階層に準えて呼んだもの



「菘、鈴菜(すずな)」は、

蕪(かぶ)の一種だから、肥大した球状の根を持つ

「かぶ」は、「かぶる」や「かぶりもの」などの「かぶ」で、頭のこと、肥大した球状の根を頭に見立てたのだろう

「すず菜」の「すず」は、「すずろ(漫ろ)」の「すず」で、有るべき程度を超えているという意味だろう

根には不似合いに大きな球状の瘤があるから



「清白(すずしろ)」は、

大根の一種で、昔からの肥大した根が白い

「大根」は、「おほ(大)ね(根)」だから、やはり、肥大した根の特徴が名前になっている

「すず」は、「すずな」の「すず」と同じく、肥大した根を表す

「しろ」を、白いことを意味すると解釈すれば、「すずしろ」で、肥大した白い根のことになる

また

「しろ」を、「代」と解釈すれば、「すずしろ」で、肥大した範囲が広いことを表しているのだろう