「にわとり(鶏)」は、「にはとり(庭鳥)」と、庭で飼う鳥を意味する

けれど、

人が捕獲し庭で飼い始めたのだから、その昔は野生で生息していた


その時の名は、「くたかけ鳥」

略して「くたかけ」のみでも、この鳥のことを表す


「くたかけ」の「くた」は、煩わしいことの意味だろう


「くたくた」は、「ぐたぐた」と同じに、ものが良く煮えて「ぐつぐつ」とする様

また

古語の「ぐたぐたし」には、煩わしいやくどいという意味がある


「くたかけ」の「かけ」は、

「かけ」は、「駆け」で、走り回るの意味だろう

鶏は、飛ぶと言っても、ジャンプするのに近いし、走り回るのが特徴の鳥だ


だから

「くたかけ鳥」は、煩わしく走り回る鳥ということになる


なお、

「くたかけ鳥」は、単に「かけ」とも呼ばれていた


古事記には、

「爾波都登理 迦祁波那久」

とあり、これは、

「にはつとり かけはなく」

だから

「庭つ鳥 かけは鳴く」

となる

だから、

「かけ」は、朝一番に大きな声で鳴く、鶏の鳴き声の「かけ」でもある

だから

「くたかけ」は、くどくどと「かけ」と鳴く鳥でもある


今の人は、「こけこっこう」と聞いている


「くたかけ鳥」の「かけ」は、走り回る「駆け」と鳴き声の「かけ」の掛け言葉の「かけ」なのだ


万葉集では、「庭つ鳥(にはつとり)」のことを、「かけ(鶏)」と書いている



庭つ鳥 鶏の垂り尾の 乱り尾の

長き心も 思ほえぬかも


にはつとり かけのたりをの みだりをの

ながきこころも おもほえぬかも


庭の鳥の鶏の垂れ乱れた尾の様に、気持ちを持ち続けることはできそうにない



「かけ」は、「鶏」の他に、「掛け」と、声に出すことと解釈すれば、

「を」は、「緒」と長いことと解釈できる


歌は、

庭つ鶏 掛けの足り緒の 御足り緒の

長か此処ろも 緒も秀得ぬかも

鶏の発する声の長いこと、長いこと、長いことだから目立つもの

とにも解釈できる


尾が長いのでもあり、鳴き声が長いのでもある



万葉集から、もう一つ、


暁と 鶏は鳴くなり よしゑやし

独り寝る夜は 明けば明けぬとも


あかつきと かけはなくなり よしゑやし

ひとりぬるよは あけばあけぬとも


歌の意味は

夜が開けると鶏が鳴いている、なるがままに、独りで寝る夜は明けるなら明けるまでのこと

となる


この歌は、

「あかつきと」は、「彼被づかと」

「かけはなくなり」は、「彼毛は無くなり」

「よしゑやし」は、「よしゑやし」

「ひとりぬるよは」は、「日取り抜る節は」

「あけばあけぬとも」は、「明け羽飽けぬとも」

と解釈できる


ここで、

「あ」は、「彼」

「かづく」は、被ることで、雛に若毛が生え始めること

「かけ」は、「彼毛」で、雛の初生毛

「なるなり」は、「無くなり」

「ひとり」は、「日取り」で、模様がなくなる

「ぬるよ」は、抜け替わる節

「あけば」は、明け羽で、代わった羽

「あけぬとも」は、「飽けぬとも」で、満ち足りる


歌の意味は、

雛が若毛が生え始め、初生毛がなくなる、やがて、斑模様が無くなり抜け替わる折には、代わった羽に満たされる

となる


この歌は、雛の羽の抜け替わりを詠んでいる