室生犀星の「ふるさとは遠きにありて思ふもの」の詩歌の出だしは、短歌の語数と合っている
ふるさとは 遠きにありて 思ふもの
そして悲しく うたふものよしや
平仮名なら
ふるさとは とおきにありて おもふもの
そしてかなしく うたふものよしや
沓冠は
ふとおそう
はてのくや
から
「嘘を問ふ、果て退くや」
となる
故郷は 家起きに在りて 思ふもの
そして悲しく 歌ふもの止しや
「と」は「家」で家のこと
これなら、家に居て歌を作ったことになる
事実、室生犀星は、この詩歌は、故郷である金沢で作られたものである
故郷に居ながら作ったのだ
しかも、その事が分かるように作られている
故郷は、家に居ても、遠くなら思うべきものだと詠んでいる
逆説的かもしれないが、室生犀星が、故郷の家にいながら、遠くから思うものだと詠んだことで、ますます、悲しい歌であることが伝わる
なお、室生犀星は、この時の帰郷を最後に、以降、故郷には足を踏み入れていない