背中
マルモ
に行ってきた。
甘いもん好きのおやっさんとおかみさんに
和菓子の手土産持って
長年、美味いん食べさせてくれた
いつも元気な笑顔をくれた
仲間達との思い出の場所を提供してくれた
その感謝の気持ちを伝えに行ってきた。
本当に有難うって。
なのに2人とも、逆にこっちに
有難うねぇ。
有難うなぁ。
って連発するんだ。
『楽しみに来てくれるあんたらに悪くてなぁ』
って。
やめてよぉ…
こっちが有難う言いにきたんだよ…
来る前からね
あまり最後ってこと意識しないようにしようって考えてた。
泣いちゃうから。
でもやっぱり
最後にこの景色をしっかりみておこうって
おやっさんとおかみさんの笑顔
手伝いのおばちゃん達の笑顔
お客さんたちの笑顔と話し声
カウンターからの厨房
この空気
おやっさんが言ってた。
地元の常連さんの中には
三代続いての常連さんもいるって。
42年だもんな。
僕なんてまだ十数年、しかもシーズン中だけ。
にわかでしかないけれど
それでもこんなに好きなんだから
地元の人の寂しさは計り知れないよな。
少人数で行ったとき
席がなくて
カウンターで呑んでた地元のおっちゃんが
おやっさんに
『いいよ。俺もう出るわ』
って席を譲ってくれたことがある。
あったかいよね。
42年間
朝早くの仕込みから夜遅くの営業まで
ずっと頑張ったんだもん。
辞めないでなんて言えるはずもなく
むしろ
遅すぎた定年退職後の
これからの人生を大いに楽しんでもらいたい。
過ぎてほしくない時ほど時間は早くって
お客さんは僕らだけになった。
厨房を片付けているおやっさんの背中は
痩せて少し小さかったけれど
1つの事をやり通しみんなに愛されている
その背中は
とても男らしく素敵に見えたんだ。
『終わりまで予約いっぱいだけど、また来てくれよ!2人くらいの席はなんとかするよ』
って言ってくれた。
こんな素敵なお店に出逢えたもんね。
お店を後にし、夜の郡上を歩くと
もう冬の匂いがした。
当たり前のように季節は巡るけど
当たり前のように思ってた大事な場所は
この冬にはない。
当たり前のことなんて何一つない。
だから、全て大事にしないとな。
御馳走さまでした。
今日も美味かったよ。
おやっさん、おかみさん。
有難う。