数年前の話だが、某社の顧問契約を解除されたことがある。

創業社長の時代に結んだ顧問契約で当時はいろいろと法的な相談にも乗っていたが、後継社長以後はまったくお声がかからなくなった。

まさか「何かトラブルはありませんか?」と御用聞きをするわけにもいかず、お役に立てなかった。

顧問契約解除の通知が届いたときは、数年間お役に立っていないのでやむを得ないという気持ちと「今までありがとうございました」という気持ちになった。

 

ところが、届いた書類を見て驚愕した。

「荘司雅彦殿」「貴殿」等々の表記がなされていた。

私たち弁護士は相手方に内容証明を送るようなときは「殿」を使うが、その他の人たちに対しては「様」とか「先生」という敬称を用いるのが一般的だ。

さらに、従来の顧問契約の更新後の満了日などには一切触れず、「同意書に署名捺印して返送して欲しい」という一方的な内容だった。

普通「満了前ではありますが、かような事情でやむなく」と書くのが常識だろう。

当該同意書の内容もお粗末極まりなく、顧問契約締結日も間違えており、西暦と元号が混在していた。

「これが自分が署名した書面になるのは嫌だな~」と思いながら、2,3日放置しておくと、その会社の総務担当社員から電話があったようで、「早く同意書を送ってください!」と語気を荒くした声が2度ほど留守電に入っていた。

どうやら、その会社ではメールをあまり使っていないようだ。

 

あまりの仕打ちに、私の最小限の自尊心はバラバラに打ち砕かれた。

私の方から当該総務担当社員に架電し、契約期間が満了していないことと、強引なことをやるのであれば当方としても対抗措置を執ること、今後の連絡はメールでお願いしたい旨伝えた。

 

私は、個人の法律相談を受けていないことから建前上「執筆、講演活動に専念」とプロフィールに書いているが、企業相手の相談や戦略立案については行っている。現に、著名な大企業に頼まれたトラブルをいくつか早期解決し、大いに感謝されたことが何度もある。

企業相手であれば自分が相手の社屋に赴けばいいので、私の事務所スペースは不要だ(余計なランニングコストがかからなくて済む)。

 

当該総務社員からは、「メールで連絡しろといったのにメールが来ない!」という語気を荒げたメールが来た。後日判明したところ、メールが届かなかったのは相手の会社のサーバーの不具合だった。

電話で「殿というのは・・・」と説明したのに、その後のメールはあえて「荘司弁護士殿」と送ってくる。あからさまな嫌がらせで、まさに有害な寄生虫扱いだ。

 

実際、有害な寄生虫のような顧問弁護士は存在する。

私が関わった大企業では、裁判所書記官に教えてもらいながら書面を提出すれば中学生でもできるような仕事で数千万の費用を請求されたケースがあった。

月々の顧問料を支払いながら数千万もの請求をされ、「前任者の時に決まっていたことなのでやむを得ない」と同社の社長は苦虫をかみ潰したような表情をしていた。

多くの企業が顧問弁護士に対して不満を持っていると聞くが、これはあまりにも度が過ぎる。

 

最終的に私の場合は、当初の顧問契約満了まで契約が継続された。

かの総務担当者は「荘司弁護士に脅されて仕方がなかった」と言いふらしていることだろう。

 

同社の上層部等で実際に面識のある方々は人格的にも能力的にもとても優れており、今でも変わらぬ尊敬と感謝の念を抱いている。

しかし、対外折衝に当たる総務担当者がこの有様では、同社の先行きには不安が残る。

とはいえ、今の私には何のお役にも立てない。

ただただ、お世話になった同社の発展を祈るばかりだ。