「これで、娘と結婚できるようになった」
妻と離婚して、幼い娘の親権者が妻となった友人が、かつて呟いたことがある。
「妻だけが親になり自分は他人になったのだから、法的に自分は娘と結婚できる」
そのように解釈したらしい。
両親が離婚して親権者にならなかったとしても、「親子関係」は消えることはない。
彼の場合も法律上も事実上も、父親のままだ。
親権者というのは、未成年の子の財産を管理する財産管理権と、居所を指定するなど身上監護権を持っているというだけのことで、子が未成年であるための便宜的措置に過ぎない。
子と同居する親に権限を委ねた方が便宜上子の利益になるので、子と同居する親が親権者に指定されるのが一般的だ。
私の友人のように、「親権者でなくなる=親でなくなる」と誤解する人が多いからか、親権の奪い合いが激化することがある。
だから、「親権者」という用語を変えるべきだと私は考えている。
「親としての権利」という用語が誤解を招いているので、「保護権者」にでもすればいい。
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また、民事訴訟の「被告」という表現も変えて欲しい。
新聞やテレビなどで、刑事事件の「被告人」を「○○被告」と呼んでいることから、民事事件の相手方が「被告呼ばわりするとは何事か!」と怒り出すことがたまにある。
民事と刑事の違いをしっかり理解していないのだからやむを得ないし、メディアの「○○被告」という呼び方も定着してしまった。
いっそ、民事事件の原告を「提訴人」、被告を「被提訴人」にでも変えればいいのではないだろうか?
「親権者」や「被告」といった誤解を招く法律用語、他にもたくさんあるかもしれない。
一般人を誤解させ、迷わせる用語はどんどん変えていくべきだと思うのだが…。