本当にあったトンデモ法律トラブル 突然の理不尽から身を守るケース・スタディ36 (幻冬舎新書)
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同業他社に転職しようとしたら、入社時に書いた誓約書を突きつけられて「転職は許されない」と言われた、という相談をHimalaya音声配信で受けた。
https://www.himalaya.com/jp/episode/358553/44682028
企業によっては、「退職後、同業他社への就職、自ら同業を営まない」という誓約書を書かせるところもある。
このような誓約書を書いた以上、同業他社への転職はできないのだろうか?
判例は、労働者の「職業選択の自由」と企業側の事情を考慮し、概ね次のような要件を挙げている。
1 退職する会社と転職する会社との地理的関係
退職する会社が一部地域のみで営業活動を行っており、将来的にも進出しないであろう地域の会社への転職は違法ではない。
2 退職から転職までの期間
地理的に重なっていても、平均すると1、2年程度の期間しか転職制限はできない。
もっとも、業種業態によっては6ヶ月でも不可としたケースもあれば5年間必要としたケースもあるので、かなり幅のある要件だ。
3 転職制限を甘受するための代償措置の有無
とくに代償金という名目でなくとも、通常の退職金を割り増しするなど、「職業選択の自由」を制限する代償措置を必要としている。
もっとも、以上は「同業他社への転職によって企業が不利益を被る恐れがあること」が前提であり、全く不利益が及ばない場合には無条件で転職は許される。
逆に、高度な企業秘密を知悉している労働者が、企業秘密を手土産に同業他社に転職すると「不正競争防止法」違反となり、刑事罰を科されることもある。
顧客名簿も「企業秘密」とした例もあるので、転職に際して身ぎれいにしておくべきなのは言うまでもない。